キャッシュレスで高額商品も売れやすくなった

Airペイはコロナ対応を主眼にした導入だったが、利用開始後は嬉しい効果もいろいろと出てきている。まず大きな変化が、正確な金銭管理ができるようになったことだ。

「Airレジ導入後も現金決済だけだった時は、毎日のレジ締め時に誤差が出ることがありました。ところが、Airペイを導入したところ、ほぼなくなったのです。導入直後でキャッシュレス決済利用率は1割程度、現在は2、3割といったところですが、これだけでもかなりの変化が見られます」と小杉氏。

また、利用客の購買行動にも変化が出てきたという。「今治のバスタオルを扱っているのですが、その値段は4000円から5000円ほどします。銭湯で使うには高額なので、手持ちがないので買いたくても買えないという方がいました。それが、クレジットカードの利用に対応したことで、購入してもらえるようになったのです。アイスや地サイダーといった少し高めの商品も買ってもらいやすいので、効果があると感じています」と、小杉氏はキャッシュレス決済導入の効果を多面的に感じており、より利用率が伸びてほしいと語っている。

Airレジのデータで「オフピーク」を推奨

小杉湯では、キャッシュレス決済対応以外にも、コロナ禍でも安心して銭湯を利用してもらうための工夫をしている。その1つが「オフピーク銭湯」だ。Twitterを利用して客数の多い曜日や時間帯を知らせることで、比較的空いた時間を利用できるようにしている。

「Airレジの集計画面から数字を消した画像を作ってTwitterに流しています。お客さまは密になることを恐れているので、人の多い時間を知らせよう、という工夫ですね」と小杉氏。

  • Airレジのデータをベースに混雑状況をTwitterでお知らせ

さらに進んだ取り組みとして、取引のある業者と連携した「もったいない風呂」がある。これは菖蒲湯やゆず湯といった季節の風流風呂を拡大したもので、台風で落ちた果実を風呂に浮かべたりするものだ。

「長野の林檎やブドウ、杉の間伐材、畳作りでゴミになってしまう藺草の端など、いろいろな風呂をやってきました。果物の場合、傷のあるものは風呂へ、綺麗なものは番台での販売へ。藺草も畳アイテムなどを販売しています。この売上は手数料なしで作り手の方へ還元しているのですが、少しでも売上になりますし、小杉湯側は入浴剤のコストがかからなくなります。もちろん、お客さまはいつもと違う風呂が楽しめて嬉しいですよね」と、小杉氏は三方よしの取り組みであることを語った。

こうした新しい取り組みや新規の物販を行う余力ができたのは、従来は手作業だったレジ締めがAirレジで簡略化できたことや、Airペイ導入によって現金誤差が減ったことなどでバックオフィス業務が効率化されたおかげだという。

また以前から用意されていた、近隣に住む利用者が主体となって立ち上げた「小杉湯となり」も新型コロナ対応モードで営業を行っているという。こちらは飲食の場としてオープンされる予定だったが時勢を考え、会員制で少人数が利用できるワークスペースや休憩の場になった。リモートワークの場を求めている人が利用しながら、タイミングを見計らって銭湯も利用できるような場だ。

「小杉湯となりでは、小杉湯で使ってきた入浴剤やお風呂アイテムの通信販売も行っています。緊急事態宣言中は従来の4割まで落ち込んだ客足も、現在は9割ほどに戻っています。来ていただきたいのはもちろんですが、それ以上に風呂を楽しんでいただきたいですし、足を運べない方にも小杉湯を届けたいですね」と、菅原氏は人々の生活の中で息づく銭湯という形を拡大する取り組みにも積極的だ。