ブルー・オリジンを中心とする"ナショナル・チーム"
ブルー・オリジン(Blue Origin)はAmazon創業者のジェフ・ベゾス氏が設立した企業で、先進的なロケットやロケットエンジンの開発や試験を行ってきた実績をもつ。また、月への植民と経済開発を実現するという目標をもち、その姿勢はしばしば「月にもAmazonを広げようとしている」とも呼ばれる。
同社は、今回のHLS開発にあたり、ロッキード・マーティンやノースロップ・グラマン、ドレイパーといった、航空宇宙業界で有名な米企業と連携しており、「ナショナル・チーム」と呼んでいる。
ブルー・オリジンは主契約者として計画を率いるとともに、月面に着陸するための機体「ディセント・エレメント」の開発を担当。ロッキード・マーティンは月面からの上昇ロケット「アセント・エレメント」の開発や、有人飛行の運用や訓練を提供する。ノースロップ・グラマンは、月周回軌道における軌道変更を行う「トランスファー・エレメント」を開発。そしてドレイパーは降下時の誘導システムや、電子機器を提供する。
ブルー・オリジンは2019年5月、「ブルー・ムーン(Blue Moon)」と名づけた月着陸機の開発計画を発表。これまで3年間にわたって、自己資金で「BE-7」と呼ばれる液体酸素/液体水素エンジンなどの開発を続けている。
ブルー・ムーンは最大3.6tの物資を搭載でき、複数の小型衛星を月軌道に放出したり、観測機器や探査車を月面に下ろしたりできるほか、有人の月着陸機に発展させることもできるとされていた。
一方ロッキード・マーティンは、NASAの次世代宇宙船となるオライオンを開発しており、またノースロップ・グラマンは現在、「シグナス」という無人補給船を運用し、国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給を行っている。
ブルー・オリジンが提案しているHLSはこれらを組み合わせたもので、月への着陸にはブルー・ムーンの技術を、月軌道における軌道変更にはシグナスの技術を、そして月面から離陸する際にはオライオンの技術をベースに開発するとしている。
打ち上げには、ブルー・オリジンが開発している「ニュー・グレン(New Glenn)」のほか、ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの次世代ロケット「ヴァルカン(Vulcan)」を使うという。
ダイネティクスを中心とする国際チーム
ダイネティクス(Dynetics)はアラバマ州にある大手の防衛・航空宇宙企業で、タレース・アレーニア・スペース・イタリア、シエラ・ネヴァダなど、米国内外の25社と連携して開発に挑む。
同社は月着陸船について、あまり多くのことを明らかにしていないが、居住モジュールがあり、最大2人の宇宙飛行士を乗せ、約1週間の月面居住を含む月周回軌道から月面の往復ミッションを実施できるという。また、将来的に月面基地が建設され、着陸船に月面居住の機能が不要になれば、最大4人まで搭乗できるとしている。
打ち上げには、NASAが開発中の巨大ロケットSLSのほか、ULAのヴァルカンにも搭載できるという。