データ集計や社内システム間の接続にも導入予定

契約業務のRPA化に成功した小菅不動産では、今後、RPAを導入する業務を広げて行く予定だ。特に社内にある各種データの集計や工事発注業務に生かしたいという。

「当社はオーナーへのコンサルティング業務も行っているのですが、その根拠となるデータの集計や分析をもっとしっかり行いたいですね。エリアごと、間取りごと、入居人数ごとにどのような傾向があるのか。どんな設備があると物件価値が上がるのか。そうした分析を行うためのデータ集計が、今は通常業務の忙しさから年に1度程度しかできていません。しかも、全体を見渡すのが難しいため、集計エリアを区切っています。市単位などの大きなくくりではなく、地域ごとに狭く細かいデータを取得できるのが地元業者の強みなので、しっかり対応したいですね」と飯嶋氏。

現在は不足するデータを担当者の経験や感覚で補っているところがあるが、データ集計・分析が進めば根拠のある数字を示すことができ、経験の浅い担当者でも十分なコンサルティングを行える可能性が高くなる。

「データの転記など、現在は社員がやっている雑務もRPA化していきたいですね。契約業務は、夏頃には100%RPA対応にしたいと考えています。今後もやりたいことはたくさんあります。例えば、工事発注システムや夜間コールセンターなどについても考えています。RPAに各システムのつなぎ役をどう担ってもらうかがカギとなります。今は、NTT東日本にロボット作成をしてもらっていますが、いずれは内製したいと考えています」と、飯嶋氏は展望を語った。

小菅不動産では現在、基幹システムのリプレースや工事一括発注システムの導入などを予定している。また、契約申し込み自体をタブレットで直接入力する「スマート申込み化」を導入する予定もあるという。各種システムが刷新されて体制が整えば、さらにRPA化が進められ、業務の効率化を図ることができる見込みだ。

RPAにミスのない事務処理を任せ、人は会う・見る・提案に注力

業務の中からロボットに任せられる作業を探し出し、RPA化する。その先には、人間には人間にしかできない業務を担当してほしいというのは、RPAを導入するすべての企業に共通することだろう。当然、小菅不動産でも同じ狙いがある。

「社員には、提案など人にしかできない業務をしてほしいと考えています。手間や時間を削るのは社内のことだけで、お客様に対する業務は効率化してはいけないはずです。会いに行く、見に行くという手間は削らない。それが地元企業の強みですから。物件を見に行けば、書類ではわからない建物の傷み具合もわかりますし、オーナーと会話する中でメンテナンスを勧めることもできます。顔を合わせる機会が少ないことで他社に発注されていたメンテナンス工事を取得できるようになることも期待できますね」と飯嶋氏。

導入から半年がすぎ、一定の効果を出した上で、さらなるRPA活用を狙っている飯嶋氏は「不動産業界の事務処理にはRPAが必要」と指摘する。

「不動産業は、法律に従って何でも書類で残す必要があります。また、自社製品を販売しているわけではなく、お客さまの財産を預かって権利を売る業務ですから、間違えた時の対応も大変です。しかし、人はミスをするものです。ですから、正確でミスのないロボットは魅力的なのです」と、飯嶋氏は力強く語った。