Versal Premiumで実現できる差別化とは?
ではVersal Premiumを使う事でどのような形で差別化が出来るのか、という話がこれに続き紹介された。まずはTransport ApplicationのスループットでASSPと比較して3倍近く、Virtex UltraScaleと比較して5倍近いスループットが実現できるとする(Photo10)。また消費電力を半減させた結果として、より実装密度を引き上げられるとしている(Photo11)。
AIに関しては、一般論的なものとしてResNet50やYOLOv2、Random Forestといった典型的なAIワークロードを利用しての処理の結果が示されたが、いずれもGPUやXeonと比べて高い結果が実現できているとする(Photo12)。
またメモリはDDR4-3200/LPDDR4X-4266のI/Fを標準で搭載しているが、それとは別に内部のBlock RAM/UltraRAMを利用することで圧倒的なOn-Chip Memory Bandwidthを実現可能としている(Photo13)。
プログラミング環境は従来のVersal Prime同様に、VivadoとVitis、それに各種AI向けフレームワークが利用できるので、開発は容易とする(Photo14)。
ちなみにこれは別にVersal Premiumだけの話ではないが、Dynamic Function eXchange(Photo15)の速度がVirtex Ultrascale比で8倍高速化された。かつてはPartial Reconfigurationなどと呼ばれていた機能であるが、単にFPGA FabricだけでなくDSPのワークロードもやはりかなり高速に入れ替えが可能になったとする。
Versal Premiumは7品種を用意
Photo16がVersal Premiumの製品一覧である。
Scalar Engineは全体に共通で、Cortex-A72×2とCortex-R5×2が利用できる。このあたりはVersal Primeと差はない。異なるのはLogic Cell(LC)とDSP、それと先に紹介したI/Oである。Versal Primeの場合、System Logic Cellは336K~2233K、LUTは153K~1M、DSPは472~2672個となっており、これと比較するとVersal Primeは圧倒的に利用可能なリソースが多い事がわかる。ロジック数だけで言えば、2019年11月にIntelが発表した「Stratix 10GX 10M」の方がやや多いが、SerDesで比較すると圧倒的にVersal Premiumが有利であり、単純にロジックの数だけでは決まらないだろう。
そのVersal Premiumであるが、ドキュメント類はすでに入手可能、ツール(Vivado/Vitis)の対応は2020年後半、シリコンのサンプル出荷は2021年前半を予定している。ただ基本構造はVersal Primeと同じなので、エンジニアはVersal Primeの評価キットを利用して、Versal Premium向けの開発をすぐにでもスタートできるとの事であった(Photo17)。