ロボトム社長は、サン・マイクロシステムズやデル、日本マイクロソフトなどを経たほか、ユーザー企業の経験もあります。2019年1月15日に、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの社長に就任したわけですが、それらの経験はどう生きていますか?
ロボトム:レノボ・エンタープライズ・ソリューションズに入って強く感じたのは、それほど大きな組織ではないのにも関わらず、組織のサイロ化が進んでいる点でした。これは、この1年間に意識して変えてきました。社員に言っていたのは、自分の仕事を100%とした場合、そのうち、10%を同僚の仕事のことや、同僚をどう助けることができるのかを考えて欲しいということでした。それを繰り返しやっていくと、お互いに信頼感が生まれ、同時に緊張感を持った関係が生まれます。他人事であれば何も言いませんが、信頼感や緊張感があればストレートに意見が言え、改善もでき、ビジネスの成長につなげることができます。正解にも最短距離で近づくことができると思っています。
日本では組織の階層構造がはっきりしていますが、それをなるべくなくしたい。組織はなるべくフラットにして、お互いに意見を言える環境を作りたい。それは社長に対しても同じです。私にもどんどん意見を言って欲しいと思っています。私のことを「ロボトムさん」という人はいませんし、「社長」や「ジョンさん」とも呼びません。みんな「ジョン」と呼びます。これはフラットで、フランクで、ストレートに言えることを目指したもので、ビジネスにプラスになることであれば、日本語でも、英語でもいいから、なんでも言ってくれと話しています。そして、飲みに行った場で話すのではなく、ビジネスの場でしっかりと言ってくれとも話しています。会社のなかでストレートに物事を言い合って、仲直りに飲みに行けばいい。もともとレノボには、話をしやすい人が多い。本社にも話しやすい人が多いですね。その点では、仕事がやりやすい環境が整っています。
社長室にも、よく社員が来てくれるようになりました。社員同士や社長と社員の関係はずいぶん変わってきたと思っています。
ただ、私が社長として社員の話を聞くときに、いくつか気をつけていることがあります。
ひとつめは、私にある提案があって、それが間違っていると思った場合にも、私は、「それは違う」ということは絶対に言わないことです。「なぜ、そう思うのか」と聞いたり、「それによってどんなことが起こるのか」ということを聞く。とにかく質問をします。そのなかで、相手もどこかに違和感を持ちはじめて、ちょっと違うかなということを感じたり、間違いに気がついたりしてくれる。私のやり方のひとつです。
また、社員と話をするときには、しっかりと時間をとって話をするということです。社長室に入ってきた社員が、私に話をしているのに、私がノートPCに向かってキーボードを叩きながら聞いていたら、真剣に聞いているとは思いませんよね。「いま忙しいから、10分後でいい?」と聞いて、ちゃんと時間を取ります。これは私が若い時に経験したことであり、やってはいけないことの|photo_right |I@003.jpg|mg.ひとつとして、肝に銘じています。
会社は人の集まりです。その人たちが同じゴールに向けて動くことができれば、いい商品や、いいサービスが提供できると考えています。そのためには、まずは社員同士の信頼関係がないといけません。まず信頼関係を築く。これを重視します。
もうひとつ、こだわっているのは、「楽しくやる」ということです。ある日、計画数字の達成に関する緊急ミーティングを招集したのですが、その雰囲気がとてもシリアスであり、落ち込んだものでした。このままでは落ち込んだ雰囲気のなかで議論することになると思い、私は笑いを取ったんです。それをみんなが笑ってくれて、会議の雰囲気が大きく変わった。私は、明るくしていれば、辛いことも乗り越えることができるし、いい仕事ができると思っています。
そのときも、「緊急ミーティングのときに笑うことができる会社は、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズしかないよ」と言って、さらにみんなで笑いましたよ。
2020年は、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズはどこに力を注ぎますか?
ロボトム:先にも触れたように、2019年は社内を変えて、パートナーとの関係を強化し、ThinkSystem SE350などを切り口として、これまでとは異なるソリューションの提供を開始するなど、まさに、「リビルド」に取り組んだ1年だったといえます。こうした取り組みの結果、チームワークが生まれ、成長モードに入り、マインドセットが変わったことでアクセルを踏み込めるようになる。2020年は、「ハイパーグロースをアクセラレート(急成長を加速)」する1年になります。もちろん、完全な組織はありませんから、アクセルを踏み込みすぎて、どこか壊れることがあるかもしれません。それは、走りながら治せばいい。
なかでも最も力を注ぎたいと思っているのはHPCです。日本は製造業が強い国ですし、製造業の領域だけを見ても、AIなどの活用は不可避になっており、そこにレノボのDCGの製品やソリューションを生かすことができます。「HPCやAIといえば、レノボだ」と言われるようにしたいですね。すでに、ほかの国ではそのイメージができています。日本でも同様のイメージを作れば、大きなオポチュニティが生まれると考えています。そして、Intelligent Transformationの実現も重要なテーマであり、ここではクラウドが重要なインフラになります。Intelligent Transformationの実現において、クラウドをどう活用していくのかということを、お客様とパートナーとともに議論していきたいですね。また、お客様に対する投資、パートナーのための投資もしていきたいですね。まずは、小売、製造、物流、医療といった4つの業界にフォーカスして、そこでお客様やパートナーと、業界や企業が持つ課題、それを解決するソリューションについて、しっかりと話をしていきたい。そうした活動を通じて、日本において、「ハイパーグロースをアクセラレート」していくことになります。