Slackがユーザーに提供する2つのコアとなる価値
--ここまで導入が拡大した要因をどのように考えていますか?
ヘンダーソン氏:成長できた要因としては使いやすさに加え、ユーザーに気に入ってもらうことが挙げられますが、それ以上の大きな要因としては仕事の性質自体が近年急速に変化していることにあります。
現在のビジネス環境はテクノロジーの進化や労働人口の変容、市場の変化に伴い、これまでにないスピードで変化しています。今後、成功する企業か否かは急速な変化に順応・対応できる組織なのかということが問われてくるものだと感じます。
企業が方向性を切り替えるにあたり、組織内で足並みを揃えることが重要ですが、順調に進んでおらず、多くの企業で課題になっているようです。
しかし、コミュニケーションに透明性を持たせることで、チームとしての方向性を合わせていくことができます。テクノロジーの進化や自動化に伴い、人間に残される仕事が変わり、これからは人間にしかできない、人間だからこそ適している業務に専念していくことが求められ、創造性の高い作業、協調性が求められる作業、チームワークが大きく問われるでしょう。
このように、多くの企業においてコミュニケーション、コラボレーション、チームワークが課題とされ、変革が求められている時代にSlackが登場したわけです。Slackには2つのコアとなる価値があり、まずは「チャンネル」です。チャンネルは個人が利用していたEメールの受信Boxに対して、チームのチャンネルという位置づけです。
そして、次に「プラットフォーム」です。過去20年を振り返ってみると、仕事で使うソフトウェアの種類は多岐にわたり、各ソフトウェアは特化した機能を持ち、特定の業務に適するように進化してきました。しかし、数多くのソフトウェアやツールを使うことで、それぞれの業務が分散化されています。われわれはコミュニケーションレイヤにツールを提供することにより、分散化している情報を集約することを可能としています。
また、サードパーティーのアドイン機能である「Appディレクトリ」と「カスタムアプリ」は重要です。大企業では社内にカスタムアプリの開発担当者を抱えていることもあるようです。
グローバルでは、このような開発担当者が70万人おり、今後も増えて欲しいと思います。さらに、昨年には技術職ではない人でもSlackの環境をカスタマイズできる「ワークフロービルダー」をリリースしています。最終的には開発の知識なしで自分でSlackを使う人がカスタマイズやSlack上における自動化の設定をできるようになってもらいたいですね。
--なにかと最近では比較されるMicrosoft Teamsに対する優位性は、どのようなものでしょうか?
ヘンダーソン氏:Teamsと比べると5つの優位性があると思います。まず1つ目がスケールです。先ほども話したようにSlackは大きな組織でも採用されており、ユーザー数が数十万人、チャンネルやメッセージが数百万件もあるような環境でも拡張して利用できます。
2つ目はプラットフォームです。こちらも先ほど説明しましたが、仕事の場面で利用されている多様なソフトウェアとの連携を可能とし、現時点においてAppディレクトリで連携しているアプリ数は2000超です。OutlookやWord、Excel、Powerpointだけでなく、GoogleやSalesforce、Workdayなど、ビジネスで使用するすべてのツールと連携しています。
3つ目はユーザーが気に入って利用してくれるツールであるか、ということに重点を置いていることです。そのためには、UXが良いものであることが重要になります。初めてSlackに触れた人が気に入って、組織の上司に利用を進言できるツールであるかどうか、実際われわれの成長は口コミで拡大してきた経緯もあります。
4つ目は顧客のエンゲージメントが高いということです。統計でみると、平均で1日9時間ログインし、Slack上での作業時間は同90分という結果となっています。メッセージの送信やファイルのアップロード、絵文字のアクションをはじめ、月間50億のアクティビティがやり取りされています。ソフトウェアが成功するか否かは、毎日ユーザーに使われるかどうか、つまりユーザーとのエンゲージメントが高いか否かで測れるのではないかと思います。
そして、最後は共有チャンネルです。これはSlackしか提供していない機能であり、複数の組織・企業間における連携を可能とし、業務環境の複雑化が進む一方で、企業間の連携も求められます。そのような場面で共有チャンネルは真の力を発揮できるのではないかと思います。また、これまで共有チャンネルは1対1が基本でしたが、近日中には複数の組織間において情報共有できる機能をリリースします。
--最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。
ヘンダーソン氏:われわれとしては、日本企業は重要な位置づけであり、近年では働き方改革に伴い多くの企業が業務効率の向上や労働時間の抑制などに頭を悩ませていると思います。そのため、Slackが働き方を見直す一翼を担い、支援できればと考えています。
わたしたちは一日の大半を仕事場で過ごしており、全従業員が自分の業務に専念し成果を出すために、より良い業務環境の体験が重要です。そのようなことから、われわれでは簡単な操作や快適な環境、高い生産性を生み出せるように支援していきます。