消費モデルに対する新たな取り組み
10月の米国でのNetApp INSIGHT 2019で発表された中で最大のニュースと言えるのが「NetApp Keystone」だ。これは、同社が提供する新しい消費モデルであり、オンプレミスでストレージを運用しつつ、支払いはクラウドモデルの従量課金で、というスタイルが可能になる。
概要は既報通りだが、特徴的なポイントとしては運用管理を誰が担当するのかを選択できる点が挙げられる。
これは、クラウド上でのデータサービスをフルマネージドで提供している点と密接に関連しているように思われるが、オンプレミスでの運用に際しても同社に運用管理を委託するか、自社もしくはパートナー企業が運用するかを選ぶことができる。単に「製品をどこに設置するか」という問題ではなく、本質はデータサービスの利用なのだから、可能な限り“as-a-Service”のモデルで提供する、ということだろう。
競合他社でもこうした消費モデルでの製品提供の取り組みは始まっており、米国企業ではHPEの“Greenlake”がよく知られているほか、ストレージ業界ではDell EMCやPure Storageもこうしたプログラムを開始している。
NetAppのCEOのGeorge Kurian(ジョージ・クリアン)氏は、こうした競合他社との違いについて「他社は単なるリースだが、NetApp KeystoneはユーザーとNetAppがリスクをシェアするモデルなのが違いだ」と説明しているものの、こうした違いは税制などにも関連するため、日本でもそのまま当てはまるのかどうかはよく分からない。
NetApp Keystoneに冠する情報提供は日本国内でも始まってはいるが、現時点では「米国での実施経験を日本に持ち込むことを考えているため、日本での正式なサービス開始は米国から数カ月程度遅れる見込み」(ネットアップ合同会社 常務執行役員 CTOの近藤 正孝氏)という。
同社はいち早くクラウド上でのサービス提供に取り組み始めているが、少なくとも日本市場では従来からのストレージ製品の販売が事業の柱である状況に変わりはなく、クラウドサービスの売上比率はまだ小さなものに留まっているという。
とはいえ、同社がストレージベンダーとして先陣を切ってクラウド企業へのシフトを開始したインパクトは決して小さくはないだろう。明確なビジョンを掲げていることはユーザー企業にとっての安心感に繋がると同時に、イノベーションの速さにも繋がるはずだ。
NetApp INSIGHT 2019の取材の際にさまざまな立場の同社社員に話を聞く機会があったが、印象的だったのはすでにストレージベンダーという枠ではなく、クラウドを軸に今後の展開を考えている人が多かったことだ。前述のKubernetesもそうだが、5年前に始まったクラウドシフトの成果としてまず社内の意識変革が行なわれたのだとすれば、しばらくはトップランナーとして走り続けることができそうだ。