エリソン氏は、今回の基調講演で、数多くの新製品を発表した。
Oracle Cloudの重要なワークロードのセキュリティを自動化し、サイバー攻撃の脅威を自動的に検出、追跡、阻止する「Oracle Data Safe」については、「Oracle Data Safeは、追加コストは発生せずに利用できる。しかも、AWSでは、10個のデータベースがあれば、それぞれに対応させる作業が発生するが、Oracle Data Safeはセキュリティを自動化できる」などと発言。
「Gen2 Exadata Cloud at Customer」は、企業が持つデータベースを、クラウド環境に移行できるように設計したもので、新たに「Oracle Exadata X8」を基盤とした第2世代のクラウドに対応。回復性と自動化機能を大幅に高め、展開をシンプルにするとともに、コストをさらに削減したエンタープライズスケールのデータベースクラウドサービスを提供できることを強調。
「Exadata Cloud at Customerは、第1世代から第2世代に無償でアップグレートできるようにしている」と説明した。さらに、「来年半ばには、企業のデータセンターのなかに、パブリッククラウドと同様、完全なAutonomous Database環境を実現できるようになる」とも述べた。同社では、「Autonomous Database Cloud at Customer」のプレビューも公開した。
また、「Oracle Exadata Database Machine X8M」では、Intel Optane DC Persistent Memory(PMEM=永続性メモリ)を搭載。100ギガビットのRDMA(リモート・ダイレクト・メモリ・アクセス)over converged ethernet(RoCE)を組み合わせることで、ストレージのボトルネックを排除し、2.5倍のパフォーマンス向上と10分の1の低遅延を実現しながら、従来と同一価格で提供。オンライントランザクション処理(OLTP)やアナリティクス、IoT、不正検出、高頻度取引といった過酷なワークロードにおいて、パフォーマンスを大幅に向上させたという。「RoCEは、InfiniBandよりも高速である。X8Mは、オラクル向けの最速のAmazon RDSストレージと比較して、50分の1の低遅延、200倍のIOPS、15倍のメモリ容量を提供する」などとした。
会場の注目を集めた発表のひとつが、「Oracle Cloud VMware Solution」によって、Oracle Cloud上でVMwareのワークロードを実行可能にしたことだ。
VMware Cloud Foundationを、Oracle Cloud Infrastructure上で稼働することで、ハイブリッドクラウド戦略をサポート。VMware vSphereワークロードを、オラクルのGen 2 Cloud Infrastructureに簡単に移行し、シングルテナントの隔離したセキュアな環境で稼働できる。
「オンプレミスで稼働しているVMスタックを、リフト&シフトして、Oracle Cloud上で活用でき、既存のツールを利用できる。Oracle Autonomous DatabaseやOracle Analytics Cloudのメリットを享受できる。これは重要な発表である」と位置づけた。
さらに、現在16カ所の「Oracle Cloud」リージョンを、2020年末までに、新たに20カ所立ち上げ、36カ所のリージョンとする計画も発表した。そのうち17が商用、3が政府用だという。これによって、日本を含む11の国または管轄区域に、複数のリージョンが存在するようになる。「全世界に4万社のOracle Cloudユーザーがおり、これはどんどん拡大している。それにあわせて、2020年末には、AWSよりも多い数のリージョンが稼働することになる」とした。
また、オラクルでは、2019年6月に、米アッシュバーンと英ロンドンの2つの商用リージョンで「Microsoft Azure」との相互接続を発表していたが、今後、数四半期中に米西部リージョン、アジアおよび欧州にも相互接続を拡大することを発表。政府用リージョンにも相互稼動性を拡大する予定だとした。
「相互のデータセンターを結ぶことで、マイクロソフトの技術とオラクルの技術を活用できるようになる。たとえば、マイクロソフトのアナリティクスと、Oracle Autonomousを同時に活用でき、それぞれへの投資も維持することができる。マイクロソフトは優秀な技術を持っている。それを利用しない手はない」と語ると、会場から拍手が沸いた。
また、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)において、Microsoft SQL Serverをサポートすることも発表した。
そのほかにも、OCI Next Gen Compute Platform、OCI Next Generation Storage Platform、 Cluster Networking、Next Generation Block Storage、Instance Resize、Elastic Instances、Marketing Paid Listingsなど、様々な製品やサービスを発表してみせた。
講演の最後には、エリソン氏は、米アップルの創業者である故スティーブ・ジョブズ氏が講演の際に使っていた「One More Thing」になぞらえて、「One More Announcement」と切り出し、「Oracle Cloud Free Tier」サービスを発表した。
同サービスに含まれる「Always Free」では、開発者と学生、教育関係者を対象に、「Oracle Autonomous Database」と「Oracle Cloud Infrastructure」の全機能を、学習、構築、ハンズオン体験ができるようにし、無償で、しかも無期限で提供する内容としている。
それぞれに1つのOCPU(Oracle Compute Unit)と20GBストレージを搭載した2個の「Oracle Autonomous Database」や、それぞれに1/8のOCPUと1GBメモリを搭載した「Compute VM」のほか、ブロックボリューム、10GBのオブジェクトおよびアーカイブストレージ、ロードバランサーが含まれ、追加サービスを利用したりする際には、30日間有効な300ドルのクレジットを提供する。なお、Oracle Open Worldの参加者には、クレジット額を500ドルに拡大して提供する。
「Oracle Cloudにアクセスしたいと思っている人が、すぐに利用できる環境を提供できる。最高の技術を世界中のあらゆる人に利用してもらいたい。AWSのような期限切れという問題もない。基調講演が終わったら、すぐに使ってほしい」と呼びけて、基調講演は終了した。
2日目の基調講演に米オラクルのサフラ・キャッツCEOが登壇
一方、会期2日目の基調講演に登壇した米オラクルのサフラ・キャッツCEOは、「The World's First and Only Autonomous Cloud」と題して講演。
「Oracle Cloudは、世界で唯一のAutonmous Cloudであり、同時に唯一の統合されたクラウドでもある。第2世代のインフラの上に、Autonomous Databaseがあり、Intelligent Applicationがあり、Oracle Analytics Cloudが稼働している。自律して動くクラウドというのは、他のクラウドプロバイダーは考えてもいないことだっただろう。Oracle Cloudは手動の部分を無くし、人的エラーを無くすことができる。信頼性が組み込まれており、効率性もあげることができる。革新的なものをシンプルに提供できるのが特徴であり、コストを下げ、よりよい情報をエンタープライズに提供できる」と前置きし、「Oracle Cloudの活用により、多くの企業がビジネスを成功に導くことができる。Oracle Cloudは、ビジネスを360度から見ることができ、チームメンバーはよりよい意思決定ができるようになる。また、Oracle Cloudには機能が統合され、AIを組み込むことによって洞察力が発揮でき、効率性を高め、効果的に仕事ができ、チーム間のコラボレーションも強化できる。さらに、Oracle Cloudを利用することで、変化の先取りができる。新たな機能を四半期ごとに提供し、継続的な革新を行うことができる。そして、Oracle Cloudの設計はユーザー中心であり、組み込まれたデータ管理と最高のセキュリティを提供できる」と発言。
「オラクル自らもこれを使用し、ビジネス変革を遂げてきた。より質の高いデータが、ずての事業部門で利用でき、AIを活用した意思決定ができる。また、新たなレベルの統合を実現した結果、チームのコラボレーションが強まり、新たなところにも投資ができるようになった。こうした実績があるからこそ、多くの企業のビジネスを成功に導くことができる」などと述べた。