SaaSだから、柔軟なクラウドシフトが可能

日本企業が2025年の崖の課題を解決するには、ビジネスの変化に柔軟に対応し、データドリブンな経営を支援するERPが求められてくる。ここでのERPプロジェクトは、なるべくユーザーへの負担を最小限に抑えるとともに、システムとしても短サイクルで導入や更新ができるものでなくてはならないだろう。

「そうなると、従来のオンプレミス型のERPでは厳しいのではないでしょうか。SaaSであれば、すぐにERPプロジェクトをスタートできますし、モジュールごとに導入するなど段階的な導入も可能です。また、アップデートも短期間で行えるため、導入時にも運用開始後にもユーザーへの負担は極めて抑えることができます。ERPをクラウド上に構築することで、企業における足かせを1つでも取り除きたいというのがオラクルのスタンスになります」と、原氏は話す。

比較的小規模の企業であれば、一気にオンプレミスからSaaSのERPに移行してしまうケースも多いという。大規模な企業の場合は、新規事業を担う部署や、海外の現地法人などまず一部でクラウド型ERPを導入し、十分なノウハウが蓄積されたり、効果が確認できたりした後に後に本社に展開するというパターンが目立つようだ。

「個人的な印象だと、大企業よりも中堅企業のほうがよりアグレッシブにERPのクラウドシフトを進めている感がありますね。規模が小さいほど人材不足はより深刻ですから、解決につながることはすぐにやっていきたいという思いが強いのでしょう。大企業については、比較的感度の高いところから導入が進み、いままさにSaaS化が広がってきています」

クラウドネイティブではないからこそ、多様な選択肢を提供できる

実のところ、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft AzureのようなIaaS上でERPシステムを稼働するだけでも、ERPのクラウド化と言えなくもない。しかし、この場合、同じERPアプリケーションを一定期間ごとに使い続けなければならないといった点でオンプレミスと何ら変わりはない。

「IaaSを利用した場合、インフラの効率化は実現できるでしょう。しかし、オラクルではSaaSを推奨していくスタンスを貫いていきます。ただし、SaaSへの移行は段階的でも問題はありません」(原氏)

なぜ段階的な移行でも構わないかというと、オラクルのERPはシングルデータモデルの上で複数のアプリケーションを動かしているからである。例えば、まず人事のモジュールから導入し、次にSFAも利用したいとなっても、データモデルが1つであるためシームレスに導入・運用が行える。つまり、全体最適を目指した活用が可能なのだ。

「最初はやりやすいところから利用を始めて、他の業務に広げても同じデータモデルが使えます。企業に蓄積されているデータをいかに活用するかがDNAと自負しているからこそ、オラクルはシングルデータモデルにこだわってきたのです」と、原氏は強調する。

たとえクラウドサービスであったとしても、部署や業務ごとにサイロ化したシステムを導入したら、オンプレミスと同じ課題を抱えることになる。しかし、全社でデータが集約されていれば、新たなテクノロジーの活用にも大きな効果が期待できるだろう。

「例えば、AIを活用する際も、SaaSでありかつシングルデータモデルであることは大きな意味を持ってきます。われわれのERPは人材をリコメンドする機能も提供しています。こうした最新のテクノロジーも自然と業務に取り入れられるのです。業務の効率化などやり尽くしたという企業もあるでしょうが、まだまだAIで自動化できる領域はあります」と話した原氏は、最後に次のように力説した。

「企業ごとにクラウドへと進む道はまちまちです。一気にできる企業もあれば、段階的に進めたい企業もあるでしょう。そうした個々の企業のニーズに対し、複数の選択肢を提供できるのは、われわれがクラウドネイティブではないベンダーだからであり、そこにも当社の使命があると思っています」(原氏)