同社には、専任のSEも在籍しているが、今回、RPAのシナリオ作成を担当したのは現場の人間だ。

その理由を岡部氏は、「SEの人はプログラムの知識もあり、RPA化の作業に向いているとは思いますが、その人しかできないというのは会社にとってリスクが高いので、現場の知識を持つ人が改善できるようにしておくべきだと思います。素人でもできるということを体験するために、今回、トライアルを行ったという側面もあります」と説明する。

実際に作業を担当したTMC経営支援センター/社会保険労務士法人TMC 統括管理部 情報システム管理 係長の阿久津匡貴氏はRPA化に関して、「とくに難しい面はありませんでしたが、より汎用的にするために変数(シナリオの作り方の工夫)を使ったほうがいいなどのアドバイスをNTT東日本さんからいただきました」と語る。

またNTT東日本からは、マウス操作はショートカットキーを使ったほうが処理が早くなり、誤作動も少ないという助言もあったという。

そのほか、今回のトライアルでは、OCRの認識精度を上げるために、以前は、会社ごとにフォーマットが異なっていた入社(加入)連絡票を統一フォーマットに変更。その際、丸をつけて選択する方式からチェックボックスに変えたり、枠に罫線を入れて分離したりするなど、NTT東日本からのアドバイスをもとに工夫を行った。あわせて、これまで口頭での連絡を入社(加入)連絡票に書き写していたケースもあったが、書類で提出してもらうように企業に依頼。その結果、確認のための電話問い合わせ時間も半減したという。

NTT東日本 栃木支店 ビジネスイノベーション部 テクニカルソリューション担当 担当課長 小野寺猛氏

今回のトライアルについて、NTT東日本 栃木支店 ビジネスイノベーション部 テクニカルソリューション担当 担当課長 小野寺猛氏は、「TMCさんは単純作業が多いという課題をもっておられましたので、今回のRPAとOCRが非常にマッチしたと思います。今年1月のサービスリリース当初は、どうやって提案していけばよいのかを模索していた段階でしたので、今回の経験はお互いに非常にメリットがあったと思います」と述べる。

一方で課題について同氏は、「TMCさんは人材を育成し、シナリオを作って、それを改善していこうという考えをもっておられましたが、他社さんの場合は、自分たちでシナリオを作って改善していこうという意識はまだないので、この点は今後の課題だと思っています。また、スキル向上に向けた教育や研修会のほか、既存のシナリオを提供していく取組も行っていきたいと思います。このようなテンプレートとしてのコアシナリオを業界にどれだけ提供できるかが市場拡大のポイントだと思っています」と語った。

今後の展開ついて葛西氏は、「既存作業をロボット化していくことはもちろんですが、お客様に提案する資料作成のロボット化(分析データの資料等)を提供していければ、さらに喜んでもらえると思いますので、現在はやっていない業務もロボット化していきたいと思います」と、RPAに期待を寄せた。

  • 取材に対応いただいたTMC経営支援センター/社会保険労務士法人TMC 岡部会長(左)と葛西社長(右)