主な特長
業界標準PMBusを備えた降圧コントローラには、純粋なアナログ・ソリューションに比べて設計者にとって多くのメリットがあります。
外部FETを使用する降圧コントローラには、内蔵FETのための余分なパッケージ空間が必要ないので、より小型になるよう設計されます。この場合のマイナス面は、小型のためピンが少なくなることです。そこで、PMBusデジタル通信を備えていることが有利に働きます。
PMBus対応コントローラは、優れた機能を持つ一方、保持するピンも少数です。パワー・モジュール・アプリケーションに不可欠のPMBusの機能の1つが、出力電圧調整により出力電圧を最適化する能力です。第1に、出力電圧を異なるレベルにトリミングしても、抵抗分圧回路は変更されません。第2に、システムの要求に応じて出力電圧のマージンを上げたり下げたりできます。例えば、出力電圧を上げると、より高い処理電力に対応できます。マージンを下げると、省電力化が可能になります。TPS40400には±25%の電圧調整機能があり、十分な量の有効なマージニングが得られます。
PMBus対応コントローラを使用するもう1つのメリットは、システムのさまざまな要素をその場で制御できることです。いったんピン・ストラップ抵抗を設置すると、変更はできません。PMBus機能があれば、設計要素を途中で変更することが可能です。降圧コントローラは、過電流保護や過熱保護(サーマル・シャットダウン)などのさまざまな保護機能にも利用できます。
TPS40345に備わるプログラミング可能な過電流保護レベル、およびヒカップ障害回復により、設計の柔軟性が最大限に高まり、長時間の出力短絡時における消費電力が最小限に抑えられます。サーマル・シャットダウンでは、デバイスの接合部温度がサーマル・シャットダウン制限に達すると、パルス幅変調器(PWM)と発振回路がオフになり、HSおよびLSピンが"Low"になります。接合部が所定のレベルまで冷却されると、PWMは、通常のパワーアップ・サイクル時と同様にソフトスタートを開始します。これらの保護機能により、仕様外の状況でパワー・モジュールが損傷することがなくなり、全体的な信頼性が向上します。
いくつかの降圧コントローラの周波数スペクトラム拡散(FSS)機能は、電磁干渉(EMI)ノイズのピークを低減させ、その結果のスペクトラムがEMI規制に合格しやすくなります。TPS40345の場合、FSSがイネーブルになると、三角形のプロファイルを持つ25kHzの変調周波数を使用して、内部発振周波数が必要最小ウィンドウにわたって拡散されます。スイッチング周波数を変調すると、側波帯が生成されます。基本スイッチング周波数およびその高調波の放射電力は、多くの側波帯周波数の周囲の小さな部分に分散されます。
設計の汎用性
パワー・モジュールの設計者は、幅広い外部部品に対応した汎用性のある設計を行う必要があります。モジュールにオンボードの出力コンデンサがあったとしても、モジュールが組み込まれる基板にユーザが外付けコンデンサを付け加えるかもしれません。これによりループの安定性が変化しますが、設計者は動的にループを安定させる手法を利用できます。
コントローラでは、外部部品や可変出力電圧、出力過電流保護などのその他のコントローラ機能を選択できるようになることで、設計者がモジュールをカスタマイズできる柔軟性がもたらされます。
ソリューション・サイズ
設計によってはソリューションのサイズが重要な考慮事項となります。TPS40345とTPS544C25を比較した例では、コンバータのソリューション・サイズの方が小さくなっています(69mm2に対して35mm2)。多くのアプリケーションでFET内蔵コンバータがよく使われるのはこのためです。
まとめ
パワー・モジュール設計には、高い電力密度をもたらすために多くの微調整が必要です。これを実現する1つの方法が、図5に示すような降圧コントローラと外付けMOSFETの使用です。
降圧コントローラの熱特性は非常に優れているため、高い信頼性と効率性を維持できます。また、外付けMOSFETを使用するとパワー・モジュール設計の自由度が非常に高くなり、幅広い電流範囲に対応できるようになります。保護機能、業界標準PMBus機能、FSSなどの内蔵機能により、さらにパワー・モジュールの訴求力が高まります。
参考情報
「TPS40345」
「TPS544B25」
「TPS544C25」
「TPS40400」
「LM27403」
ユーザー・ガイド(英語):LM27403EVM-POL600
著者プロフィール
Josh Frazorテキサス・インスツルメンツ
DC/DCコンバータ&コントローラ事業部
プロダクト・マーケティング・エンジニア
Mathew Jacob
テキサス・インスツルメンツ
プロダクト・デフィニション&システム・アプリケーション部門
アプリケーション・エンジニア