3. コグニティブ技術に向けて進化するFPGAテクノロジ
FPGAテクノロジもまた、進歩し続けています。最新のFPGAは非常に多くのロジックを搭載し、ワットあたりの演算能力が向上し、専用IPブロックにより最大150Gb/秒という高速データストリーミングをサポートします。現在、FPGAの演算能力が向上したことで、5年前にはまず不可能だった革新的な技術への扉が開かれています。
新しいFPGAテクノロジが可能にする技術革新の1つとして、コグニティブレーダーにおける機械学習技術の応用が挙げられます。この技術により、レーダーの環境への応答性が向上し、より実用的なインサイトを提供できます。機械学習によって、レーダーはあらかじめプログラムされた操作モード(探索モード、追尾モードなど)ではなく、動作周波数や波形タイプなど、もっとも適した動作パラメータに自動的に順応できます。機械学習はまた、自動ターゲット認識(ATR)などの機能を可能とし、知識支援型の動作を促進します。
航空宇宙/防衛関連組織はFPGAテクノロジを長年にわたり使用していますが、もう1つの進化はハイレベルのFPGA設計ツールの進歩です。ハイレベルのツールは、ホストベースのアルゴリズムからFPGAへの移行を簡素化しながら、設計にローレベルHDLを統合することで開発効率を向上させることができます。
LabVIEW FPGAの場合、PCI Express、JESD204B、メモリコントローラ、クロックなどのボードインフラストラクチャの抽象化を通じて、NIのハードウェアとソフトウェアの緊密な統合によるメリットを得ることもできます。こうしてFPGA開発の焦点をボードサポートからアルゴリズム設計にシフトさせることで、性能を妥協することなく、開発の労力を削減できます。
より抽象化されたFPGAツールが開発サイクルの短縮にもたらす大改革は、これまでのVHDLやVerilogの専門知識がないソフトウェアエンジニアや研究者、厳しいスケジュールを守らなければならないハードウェアエンジニアにも影響を及ぼします。
4. センサフュージョン用の高帯域幅データバス
もう1つの重要なトレンドとして、高帯域幅センサデータを集中処理装置に戻して演算を行うために、PCI Express Gen 3、40/100GbE、ファイバチャンネル、Xilinx Auroraなどの高帯域幅データバスへの依存度が高まりが挙げられます。
たとえば、F-35の統合コアプロセッサは複数のISRセンサのデータを集約して、データセット全体での処理を可能にします。これにより、パイロットの状況認識が向上します。このトレンドの中心には、高速シリアルトランシーバテクノロジ(マルチギガビットトランシーバまたはMGTとも呼ばれます)の進化があります。
このテクノロジは近年急速に進歩しており、現在のラインレートはレーンあたり32Gbpsに達し、PAM4で56Gbpsの達成も見えてきました。FPGAは主に処理リソースとして考えられていますが、非常に高度なMGTを搭載するものもあり、センサ開発の理想的な目標となっています。
モジュール式計測器を使用することの利点は、処理能力や帯域幅が時間の経過とともに急速に増加するにしたがって、システムを簡単に進化させられることです。PXIプラットフォームは特に、高帯域幅のデータストリーミングと統合されたタイミング/同期機能を必要とするシステムに適しています。
モジュール式のCOTS計測器による連携
これまでに紹介した基盤テクノロジの急速な進化に伴い、レーダーの技術とアーキテクチャは複雑化が進み、機能も向上しています。テクノロジの継続的な進歩に合わせて、テストシステムも進化し続ける必要があります。設計能力と詳しい知識の両方を社内で確保できるのであれば、レーダーの試作およびテストシステム向けにフルカスタムのハードウェアおよびソフトウェアを社内開発することは、要求されるカスタマイズと性能を実現する上で唯一の実行可能な選択肢のように思われるかもしれません。しかし、このようなソリューションは長期間の保守業務と機会費用も伴います。
FPGAの出現と、モジュール式フォームファクタで可能となった新しい変換器テクノロジおよびストリーミングテクノロジの急速な普及により、COTSソリューションは仕様要件を満たすだけでなく、システムの寿命を延ばし長期稼動を達成するための柔軟性も提供できます。
NIはこれらのテクノロジをモジュール式のCOTSフォームファクタに迅速に取り込むことで、エンジニアが厳しいスケジュールや予算を守りながら、高度レーダーシステムの進化する要件を満たすことを可能にします。
著者プロフィール
リア・ラングストンNational Instruments
プロダクトマーケティングマネージャー
「FlexRIO」や「LabVIEW」 FPGAモジュールを含むNI FPGAハードウェアおよびソフトウェア製品のプロダクトマーケティングを担当。2012年NI入社。顧客を直接サポートするアプリケーションエンジニアとして、オースティンを拠点とするサポートグループの管理を行った。その後「CompactRIO」のシングルボードコントローラやシステムオンモジュールなどのNIの組込み製品ラインのマーケティングを目的とした製品マーケティングへ転向。再生可能エネルギーおよびパワーエレクトロニクスの専門知識を磨く。 最近では、NIの自動テストポートフォリオに焦点を広げ、航空宇宙/防衛のテストアプリケーションに重点を置き、NIのFPGA対応計測器の発売を主導
電気工学の学士号を取得(コロラド鉱山大)