「直近2017年度の売上前年比は、154%と堅調に推移していますが、その間、アクティブな加盟店は約1,500社とほぼ一定です。つまり『生活110番』の認知向上に伴い当社からの送客は増え、1社あたりの成約数が向上しているわけです」(池田氏)
同サイトは、SEOなどWebマーケティング施策での集客アップに加え、成約率の向上を目指した。ここで同社が注目したのは、入電から成約までのリードタイムである。既存のシステムで組み立てられた成約までの流れはこうだ。
エンドユーザーから必要情報を聞き出したオペレーターは、「当社の加盟店より折り返しご連絡いたします」というトークを最後に電話を切る。続いてオペレーターは、システムによってリストアップされた加盟店に自動でメール配信を行い入札対応を行うが、入札されなかった場合、オペレーターが上位から順に電話をかけ、受託可能か問い合わせる。オペレーターは業者のスケジュールを把握していないので、都度電話で直接問い合わせる必要があるのだ。受託可能な業者が見つかると、エンドユーザーの諸情報を伝え、加盟店からエンドユーザーに電話を入れ、そこで諸条件の合意が取れれば、めでたく成約となる。
「エンドユーザー様からの電話をいったん切り、加盟店様から折り返しの電話が入るまでのリードタイムが当社の課題でした。取り扱いジャンルにより長短はあるものの、通常のリードタイムは20~30分程度ですが、加盟店との調整が長引いてしまうと、その間にエンドユーザー様は別の業者にも連絡を入れ、最終的には価格勝負の相見積もりとなったり、他社に先着される場合もあります。どうやったらリードタイムを短縮できるか、可能であればリードタイムをゼロにする。つまり、オペレーターが電話を受けた時点で成約できないか検討しました」(池田氏)
スマートフォンのGPS機能を利用したリードタイム短縮策
既存システムの後継となる次期システムの開発にとって最大の課題は、リードタイム短縮による成約率向上だった。仕様の検討を進める中、GPSによる位置情報の取得とスケジュール機能をもったスマートフォン用アプリケーションの提案をソフトバンクより受けた。
既存システムの機能に位置情報とスケジューラを連携させた新たなシステム「Mover」では、入電から成約までのプロセスが大幅に変更となる。エンドユーザーからの電話を受けたオペレータは、「Mover」の画面上に示された加盟店の作業員ごとの位置情報とスケジュールを確認し、顧客から近く、かつ手の空いている作業員にその仕事を発注する。オペレーターは電話を切らずに、エンドユーザーにどの加盟店が担当することになるかを伝えて成約する。該当の作業員にはスマートフォンに仕事を発注した旨のメッセージが送信されるという仕組みだ。
「加盟店ごとではなく、作業員単位で位置情報とスケジュールを把握できるのが、スマートフォンを使った『Mover』最大の利点です。店舗がエンドユーザーから近くても、その時に空いている作業員は遠方の仕事を終えて移動中だったりします。以前のシステムでは、加盟店作業員の移動時間は考慮していなかったので、結果的に長時間の移動も発生していました。『Mover』に移行することで、加盟店は非効率な移動時間を削減してより多くの仕事をこなせるようになりますし、当社オペレーターにとっても加盟店との電話のやり取りが不要になるため、繁忙時での応答率向上につながります。こうした各パートでの効率化によって、さらなる成約率向上を目指しています」(池田氏)
「Mover」への移行に先立ち、同社は全国の加盟店への説明会を開催し、新システムのメリットや使い方の周知を行った。スマホアプリとしてリリースされる「Mover」はAndroid版/iPhone版ともに無料配布し、スマートフォンを持っていない者にはソフトバンクの提供するAndroidスマートフォンまたはタブレット端末を契約してもらった。
「事前に実施した電気工事(スイッチ工事、コンセント工事、漏電工事など)を対象としたテスト運用では、平均リードタイムが76分から0分へ、その結果成約率が36.8%から40.3%へと向上しました。こうした導入メリットを加盟店に浸透させて、普及を進めていきたいと考えています」
急を要する事態に業者がつかまらずイライラさせられた経験は誰でもあるだろう。作業員のリアルタイムな位置情報に基づいた迅速な手配が可能になれば、ユーザーとしては大いに有難い。外回りが主となる作業員に業務スケジュールの入力を習慣づけさせるのは大変だが、同社では加盟店に出向いてサポートを行う専門スタッフを増員して「Mover」の利用促進を図る方針だ。