Type-Cからオーディオ信号を出力させる仕組み
FSA4480は、USB2.0、マイク、およびサイドバンド信号用の単一インタフェースであり、Type-Cポートを通じてオーディオ信号を供給する必要があるどのような携帯機器にも使用できます。OMTP/CTIA(AHJ)検出、抵抗検出、高電圧保護などの機能を備えており、この応用分野に先進のソリューションを提供します。オーディオ高調波歪(THD+N)の低減とポップノイズ抑制の最適化を実現しながら、信号の完全性を維持した状態でこれらすべての機能を利用できます。
前述したとおり、従来のヘッドホンジャックからUSB Type-Cへの移行期間には、3.5mmプラグをUSB Type-Cポートに接続する外付けアダプタが必要になると考えられます。4極のTRRS(チップ-リング-リング-スリーブ)3.5mmオーディオインタフェースには、OMTPとCTIA(AHJ:アメリカン・ヘッドセットジャックとしても知られる)の2種類の規格があるため課題が生じます。つまり、ポートに4個の独立した導体を備えていることの利点は明らかですが、これら4個の導体の構成方法が問題になるわけです。図1に示すように、これら2種類の規格で4個の導体の構成が異なります。他のタイプの機器が追加されると、各導体の定義はさらに多様になる可能性があります。
複数の規格に共通のインタフェースを提供しようとするソリューションでは、これらの規格を自動的に検出し適合させる必要があります。これはメーカーにとっては現在の市場における共通課題に対処すると同時に、次世代のユーザインタフェースを提供する好機となります。
基本的に、MIC入力が検出できず3.5mmプラグの正しいリングに切り替えることができなければ、適切なユーザ体験が得られないことになります。FSA4480は、MICとグランドのリングを検出してデバイス内の正しい信号経路に切り替えるだけでなく、他のフォーマット(2または3極プラグ)も検出して適合させることができます。
同様に、FSA4480にはUSBポートの接点間の抵抗を測定するセンシング回路が集積されているため、Type-Cインタフェースに破片、水の侵入、その他の導電性の汚れなどで起こるピン間の偶発的な短絡からデバイスを保護することもできます。
また、あらゆる種類のデジタルおよびアナログ信号に必要な全スイッチを集積しているので、すべてのデータストリームの信号経路が最適化されます(図2参照)。これによりTHD+Nが-110dBの高音質を実現できます。
FSA4480の機能の多くは、専用レジスタを使用しI2Cインタフェースを介して制御されます。たとえば、過電圧保護(OVP)機能は、OVP割り込みマスク、OVP割り込みフラグ、OVPステータス用の3個の専用レジスタを備えています。同様に、レジスタによって、オーディオスイッチ左チャンネル、オーディオスイッチ右チャンネル、MICスイッチ、センススイッチ、およびオーディオグランドスイッチを制御できます。左、右、MICスイッチの検出から切替えまでの遅延時間も専用レジスタを使用して設定できます。
もう1つの重要な機能は、前述のようにピン間の偶発的な接触を検出できることです。RES検出のピン設定、RES検出値、RES検出割り込みのしきい値、RES検出間隔などもレジスタによって制御できます。このレベルで設定および制御可能なため、OEMは携帯電話、オーディオプレーヤ、スマートスピーカーのいずれに対してもアプリケーションのニーズに的確に対応するようにFSA448を設定できます。
まとめ
USB Type-Cインタフェースは、複数の機能を単一インタフェースに集積することによって家電製品の外観に変化をもたらしています。このため必然的にUSB Type-Cへの移行期間が生じますが、これまでの主流であった外部オーディオインタフェースである3.5mmジャックに対応できるソリューションへの需要が生まれる可能性もあります。高級ヘッドホンは高額なので、気に入っているヘッドホンやイヤホン製品を使うための明確で効果的な手段を提供しない限り、消費者はUSB Type-Cへの移行には気乗りしないでしょう。FSA4480は、そうした手段を提供できる1つのソリューションとなるといえるでしょう。
著者プロフィール
ジュリー・スタルツ (Julie Stultz)ON Semiconductor
テクニカル・マーケティング・マネージャー
半導体業界での18年の業務経験を有し、アナログ回路設計の経歴と、自身の名前による複数の特許を取得している。また、この4年間、ビジネス開発に従事しており、USB、USB Type-C、USB PD、MIPI、オーディオ、ならびにスィッチ関連製品を担当してきた。さらに、ON Semiconductorのさまざまな部門にまたがる、USB Type-CとUSB PDのコラボレーション業務のまとめ役も務めている。