モバイルヘルス向けSoCソリューションの考え方
モバイルヘルス向けワイヤレスソリューションの1つとして提供されるオン・セミコンダクターのSoC「RSL10」は、ディープスリープ状態および最大受信時に業界最小クラスの消費電力を実現しています。また、高効率プロセッサコアとして、EEMBCのULPMarkの認証も取得しています。
デュアルコアアーキテクチャを中心に構築されており、48MHz動作の32ビットArm Cortex-M3プロセッサと32ビットDSPを、5.5mm2の面積に集積化したSoCで、ローカルセンサからの重要なデータを収集し処理することができます。関連するベースバンドハードウェアはBluetooth 5の認証済みで、従来デバイスの約2倍のデータスループットである最高2Mbpsまでの速度でRFリンクをサポートしています。
さらに76KBのSRAM(プログラム用メモリ)、88KBのSRAM(データ用メモリ)、BLEのスタックおよびアプリケーション用384KBフラッシュメモリを内蔵するなど、柔軟性のあるアークテクチャを実現しているほか、重要となる消費電力に対応する高度な電源管理システムを内蔵しています。1.1~1.3Vの任意の電圧で動作するため、標準のコイン形電池での動作に対応可能です。
一般的なIoTのモバイルヘルスケアアプリに対し、このSoCでは数ミリ秒間の送信を必要とするだけなので、内蔵のスタンバイモードにより平均消費電力を標準30μAまで低減できます。動作が必要ない場合は、複数用意されているディープスリープ・モードのうちの1つに入り、電流消費を25nAレベルにまで低減できます。
モバイルヘルスケアの実現には、データの堅牢性、安定性、および安全性が大切であり、内蔵IP保護が重要な機能になります。これにより、チップ起動後はフラッシュメモリの内容をコピーしたり外部からアクセすることができなくなるため、機密性の高い個人データを確実に保護できます。
RSL10はFirmware Over-The-Air(FOTA)のプログラミングもサポートしており、新技術がリリースされたときに利用できるよう、スタックとアプリケーションを適宜アップデートする柔軟性を提供します。
また、オン・セミコンダクターでは、設計プロセスの簡素化のために、ソフトウェア、ハードウェア、およびサポートされている広範囲のBluetoothプロファイルを含む完全な開発環境の提供も行なっています。
まとめ
世界の人口動態の変化および個人医療への関心の高まり、柔軟性のある遠隔医療へのトレンドにより、モバイルヘルスケア市場は革新的な半導体ソリューションや通信機能によって活性化され、急速に成長しています。
多くの新市場と同様に、設計者はソリューションを旧来のプラットフォームに組み入れ、モバイルヘルスケアユーザの高い期待に応えるという課題に直面しています。幸いにも、RSL10をはじめとする次世代低消費電力無線SoCが、これらの課題を解決するために必要なプラットフォームとして活用できるようになっています。
著者プロフィール
スティーブン・ディーン(Steven Dean)ON Semiconductor
半導体並びに医療機器分野で25年以上の業務経験を有しており、現在はON Semiconductorのシグナル・コンディショニング、ワイヤレス及び医療部門のビジネス・マーケティングを統括。同社入社以前は、Medtronicでビジネス開発担当ディレクター、Texas Instrumentsでマーケティング担当ディレクター、Freescale Semiconductorでセグメント・マーケティング担当ディレクターを務めていた。