リテラシー
すでに述べたとおり、リテラシーは大きな障害ではありますが、アクティビストの活動や長期的なデータ変革への橋渡しとなる可能性があります。
www.dataliteracy.infoでQlikが行ったアンケート調査によると、役員や上級管理職など日本企業の意思決定者の中で「データの読み取り、処理、分析、議論する能力について完全に自信がある」と答えた人は、約3分の1に過ぎません。
この割合は、ほとんどの会社のビジネス・インテリジェンス(BI)ツール導入率とも一致しています。その一方、「自分のデータスキルの向上に時間とエネルギーを喜んでつぎ込む」と答えたのは、日本の回答者ではわずか31%でしたがアジア太平洋地域全体では82%でした。
企業は企業文化のシフトを加速するデジタルリテラシー戦略を採用するべきです。従業員とアクティビストたちがデータへのアクセスとデータリテラシー・スキルによって力を得て、組織内部で自由にその知識を広め共有できるようにすべきです。
アプリケーション
すでに広く言われていることですが、アプリケーションがなければデータは精製前の原油のようなもの、つまり役に立たないものです。重要なのは、さまざまなユーザーに合わせて適正なアプリを用意することです。
週に一度、キーとなるKPIを確認するだけの人もいれば、営業担当者のように携帯電話で瞬時にKPIを確認する必要がある人もいます。また、構築済みのアプリを使ってデータを探索したい人もいれば、自分専用のアプリを作りたいという人もいるでしょう。誰もが状況に応じたデータを必要としています。
そのため、カスタムアプリ、マッシュアップ、ボット、エンベデッドなど多彩なインタフェースを活用すべきです。さらに、これらがデータモデルを再利用できるハブの中にあれば理想的です。データや人間と同じようにアプリケーションにも独自の認証(certification)システムがあれば有益です。
便利なアプリは長く使われ、エンタープライズ規模で使用できる(高レベルのガバナンスを伴う)認証アプリになる一方、散発的な質問に応答するだけでいずれ使われなくなり姿を消すアプリもあります。ただし、組織隅々にわたる実験なしには、データドリブンのイノベーションを完全に実現することはできません。
アイデア
全般的な後援者としてCDOは、データドリブンなアイデアの判定や実現という機能を果たすかもしれませんが、この種のアイデアは多くの場合、組織内や現実の問題に直面している人から生まれてきます。
「どんな人も多数の人の知恵にはかなわない」と聞いたことがありますが、これまで説明した「データ」「アクティビスト」「リテラシー」「アプリケーション」の4要素の実現を別にすればアイデアを活用する最善の方法は、ゲーム手法の応用やコラボレーションを支援するインフラと文化を整え、こデータドリブンなアイデアを捉えることです。
さらに、実験段階からワークグループ、部門を経て、最後はエンタープライズ・グレードへ、という進化が可能なインフラを持つことです。そうすれば、トップダウンのベストプラクティスやガバナンスから、ボトムアップのアイデア創出やアジリティへという好循環が生み出せるでしょう。
上記5つの要素は、また理論上のものではありますが、このようなフレームワークの断片的な要素は、わたしが見てきた中でも特に成功したデータドリブン・プログラムの中に存在していました。もちろん、業種や規制環境などに合わせてプログラムを適用する必要があります。
CDOをはじめデータ分析に関するリーダー層は、大きな影響を与えるために以上の原則のいくつかを採用することができますし、また採用すべきです。
北村守(きたむら まもる)
クリックテック・ジャパン株式会社 カントリーマネージャー
1968年生まれ。北海道小樽市出身。
2017年8月、クリックテック・ジャパン株式会社カントリーマネージャーに就任。
現在は、19年以上にわたるIT業界における経験を生かし、クリックテック・ジャパンのトップとして、データ主導型ビジネスの可能性と認知度の向上を図り、日本市場における活性化をパートナーとともに牽引し、日本でのさらなるビジネスの発展、進化を推進する。
クリックテック・ジャパン入社以前はデマンドウェア株式会社の代表取締役社長として、日本国内のビジネス拡大と顧客満足度の向上を牽引し、同社の成長に貢献。
デマンドウェア株式会社以前は、マイクロストラテジー・ジャパン株式会社にてセールスディレクター、日本パラメトリックテクノロジー株式会社(現PTCジャパン株式会社)にてリージョナルディレクター、エリアバイスプレジデントなど、業界をリードする各社の要職を歴任してきた。