梅澤氏は、社内にRPAを普及させるための教育も担当している。各部門から担当者が集まり、定期的にミーティングを行うIT推進のグループ活動が存在しており、その中で2017年秋から順次教えてきたという。

「各部門から代表者として直接集まるのは15人程度ですが、その人に各部門に広げてもらって、本社の事務部門で働く職員全員が利用できるようにしました。ノンプログラミングですし、使い方そのものへの戸惑いなどはあまり感じませんでした」と梅澤氏は語る。

特に活用が進んでいるのは、営業推進部や総務部だという。「総務・経理の仕事には波があります。ある一定の期間に締切りを守って作業しなければならず、ミスが許されないというような業務が多いですから、RPAには向いているのです」と、北川氏は小規模な使い方が活きる場であると語った。

しかし、社内では効果が見えやすいものとして最初に取り組んだいくつかの業務のRPA化が完了してから、ロボット活用は少し停滞傾向にあるという。

「心理的な問題と、技術的な問題があります。心理面では、ロボットに仕事を任せることで自分の価値が下がるのではないか、慣れた仕事が減った分だけ新しい仕事を任されるのではないかというような不安です。さらに、ロボットで効率化した結果早く帰れるとしても、周囲の目が気になるというようなこともあるでしょう。技術的な問題としては、業務自体はできていても、標準化やフロー化という部分でつまずいてしまう人が少なくないということがあります」と北川氏。

ニッセイ保険エージェンシーは前述のとおり、総労働時間の削減や休暇取得の向上に積極的に取り組んでいる。それだけに、労働時間の長さで評価するような制度ではなく、『働き方改革』推進の気運も根付いているはずだ。それでも心理的な負荷・不安は消えないという。

エンドユーザーからの問い合わせを受ける立場である梅澤氏も「操作で悩んでいる様子はなく、作ったものが動かなかった場合や止まってしまった場合も、見直せば問題点は見つかります。あとは、やりたいことがすぐできるメリットを感じさせることが大事でしょう」と心理的な壁を越えさせることが今の課題だとしている。

「評価等をしっかりすることはもちろんですが、動機づけが大事。今はこの仕事にいくらかかっているのかというようなコスト面を意識させるなど、いろいろな試みをしています。標準化・フロー化については、ロボットを作るために見直したことで無駄が省けた例もありますし、仕事を見直すいい機会です。今はうまくできない時に教えてくれる人がいると頼ってしまうところがありますが、全員が自分で使えるようにしたいですね」と北川氏は目標を語ってくれた。