生徒同士の交流で生まれた新たな付加価値

今回の新しい試みとして、すべての発表に英文のアブストラクト(抄録)がつけられたほか、生徒相互評価等交流の時間が設けられた。

この点について参加した生徒たちからは、「他校の生徒や審査員の方々にアドバイスをもらい、人とのつながりができるとますます研究が好きになります」(女子生徒)、「自分が研究してきた内容について、興味をもってもらえて質問してもらえるのは嬉しい。また審査員の先生からもポスター発表でいろいろな示唆をいただき、帰ったらすぐ調べてみます。また来場した同学年の人たちからもいろいろなアイデアがいただけ、知的好奇心が刺激されるし、他のところの発表で面白いやり方やアイデアがあって、これはどうなるんだろうと聞くと、答えがちゃんと返ってくるのが楽しかったです」(男子生徒)といった感想があがっていた。

審査員たちが評価したポイント

また研究発表全体の講評については、スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会審査委員長の重松敬一氏より、テーマ設定については、自分の興味・関心のある身近なテーマでアピール性のある研究が多かった点、防災や減災など身近な自然のテーマで、社会へのアピールがあった点、さらに数学、地学のテーマが大きく増えた点がよかったとして挙げられた。

課題解決の過程については、高校生らしい発想で仮説を立て、計画立案にさまざまな工夫が見られ、粘り強く、何度も繰り返し観察、実験を行っている点がよかったとして挙げられ、考察・分析・推論についても、実験結果等をもとに仮説に対してどの点が支持されたのか、どの点が限界なのかを明確に説明しており、実用化など次に生かそうとする態度がみられたことがよかったと評価された。

重松氏はプレゼンテーション力について、自分の言葉で研究内容を説明できている点、質疑応答時において上がってきた質問力、またその質問に対して的確に回答している点、さらにタブレットを用いて映像を活用したり、自作の実験装置や再現実験の実物を持参したりするなど、わかりやすく研究を説明しようとする工夫が見られた点について高い評価を与えた。

今後の改善ポイントについては、先行研究との違いを明確にする、仮説と結論を明確にする、研究手法の妥当性への配慮、高校生らしくチャレンジできる研究設定といった点が挙げられた。

"ふしぎ"を探求することが意味するものとは

今回は、日頃の課題研究の成果を発表するものであったが、これまでの一連の研究・調査等を通じて得られた点について参加したSSH指定校の生徒たちから、「研究を通じて、筋道をたてて考え、論理的に研究を進めることの大切さを実感しました。疑問点の見つけ方も、最初のうちはどこに目をつけたらいいのかも分からなかったけれども、先生や一緒に研究をする仲間がやっていることを見て聞いて、学ぶことができました」(男子生徒)、「研究を始める前は、生物は好きだけど知識は全然ありませんでした。だから、結果をみても何が大事で何が大事じゃないかが分からない。そもそもどこに目をつければいいのかさえも分かりませんでした。またどこに目をつければいいのかが少しずつ分かり始めても、今度はどれが大事な結果なのかがわからないといったことの繰り返しでした。でも、研究を続けてきて今は、これまでの結果と照らし合わせながら実験を進め、ストーリーを組み立てる上で何が大事なのかを見極めて、それに関わる次の実験が大事だということが分かりました」(女子生徒)という感想がでていた。

また参加した教育委員会等管理機関の関係者に対しては、「理数探究基礎」や「理数探求」の指導の先進事例となるようにホームページ等による積極的な情報発信に対する支援や、都道府県、全国の科学技術人材の育成、そのための理数系教育の充実を牽引する役割への期待が述べられた。

17年目以後の成果が問われるSSH。これまで積み上げてきた成果を、各地域の他の高校や近隣の小中学校等へいかに活用・普及していくのかについても、具体的な施策が期待される。