「働きやすさ」と「やりがい」の軸で職場を4つに分類
次に、同研究所では、「働きがい」を「働きやすさ」と「やりがい」という2つの軸から、職場を4つのタイプに分けて、業績との関係を分析した。ちなみに、「働きやすさ」とは、快適に働き続けるための就労条件や報酬条件などを指す。一方、「やりがい」とは、仕事に対するやる気やモチベーションなど、仕事そのものや仕事を通じた変化に起因するものとなる。
岡元氏は、「現在、日本の企業が取り組んでいる『働き方改革』の多くの施策は、働きやすさを改善することに主眼が置かれている。働きやすさの改善はもたらされるメリットも多いが、やりがいが見落とされているケースが多い」と、日本の働き方改革の問題点を指摘した。
同研究所が行った分析では、「働きがいのある会社」ランキングに参加した企業の調査のうち、「従業員へのアンケート」を分析し、「働きやすさ」の因子として抽出された設問の平均値を用いて「働きやすさ」得点とし、それ以外の設問の平均値を「やりがい」得点とした。
こうした分析の結果、「いきいき職場(働きやすく、やりがいもある)」「ばりばり職場(働きやすさはないが、やりがいがある)」「ぬるま湯職場(働きやすいが、やりがいがない)」「しょんぼり職場(働きやすくもなく、やりがいもない)」の4つの職場タイプが抽出された。
この4つの職場タイプごとに「売上の対前年伸び率」を算出したところ、「いきいき職場」が43.6%、「ばりばり職場」が22.0%、「ぬるま湯職場」が6.0%、「しょんぼり職場」が6.5%という結果が出た。
「やりがい」が低い「ぬるま湯職場」と「しょんぼり職場」よりも、やりがいが高い「いきいき職場」と「ばりばり職場」のほうが、「売上の対前年伸び率」が高かったことから、同研究所では、業績を向上させる上で「やりがい」は重要な要素と位置付けている。
「働きやすさ」と「やりがい」がある職場を目指そう
岡元氏は「いきいき職場」から学ぶべき、業績向上につながる「働き方改革」のポイントとして、「『やりがい』にも目を向ける」「経営トップが本気でコミットする」「現場の実態に寄り添い、現場を巻き込む」「仕事を意味づけ、棚卸しをする」の4点を挙げた。
「『働き方改革』だけを目的にすると、働きやすさだけの改善にとどまってしまう。自社のビジョンやミッションとのつながりを踏まえ、最終的なゴールに目を向けることが大切。また、仕事の意味づけと価値づけも重要。目的を意識させることで、捨てる仕事を見つけることが可能になり、業務の効率化にもつながる」と岡元氏。
「やりがい」どころか、「働きやすさ」さえも整備されていない企業もあるだろう。ただ、先に挙げた調査では、働きやすいが、やりがいがない「ぬるま湯職場」と働きやすくもなく、やりがいもない「しょんぼり職場」では、「売上の対前年伸び率」がほぼ同じという結果が出ている。一概には言えないが、働きやすさを改善しただけでは、業績向上につながらない可能性があるわけだ。
「働き方改革」が注目を集めている背景には、日本の労働人口の減少と生産性の低さがある。働く人が働きやすい環境を構築しつつ、国全体の生産性も挙げていく必要があると言える。
「働き方改革法案」が可決した今こそ、「働き方改革」に本腰を入れる前に、自分の会社にとって、どんな「働き方改革」が必要なのかを考えてみる必要があるのではないだろうか。