Googleは情報を扱う企業だ。Googleが「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること」を使命としているのは有名である。では、Google Cloudの使命はというと、Greene氏いわく「顧客のあらゆる情報を整理し、それをスーパーチャージすること」だ。
情報はビジネスを動かす。クラウド・コンピューティングは単なるインフラのアウトソースではない。無限と言えるようなスケール、信頼性やアジリティ、セキュリティを約束し、インテリジェントなソリューションを提供する。それらを解決する技術と革新が継続的に求められる。
Urs Hölzle氏 (Googleシニアバイスプレジデント)によると、今日エンタープライズクラスの企業の80%がハイブリッドまたはマルチクラウドを利用している。セキュリティやコンプアイアンスといった観点から、オンプレミスを残しながらクラウドの可能性を模索しているケースも多い。その結果、新技術を通じてコスト削減を実現できているかというと、IDCの調査では2005年から2015年の間にサーバー費用は15%減少したものの、管理コストが83%も上昇した。
この日、Googleは「Cloud Services Platform」と「GKE On-Prem」という"顧客のあらゆる情報の整理"につながる大きな発表を行った。
ハイブリッドクラウドやマルチクラウドといった多様な環境でアプリケーションをデプロイしなければならないケースが増えるに従って、ここ数年でコンテナのニーズが劇的に拡大した。コンテナ上で動作するアプリケーションが増加するほどに、それらを管理するフレームワークの需要が高まる。
それに応えたのが、Googleが開発し、CNCFが管理するオープンソースプロジェクトで公開された「Kubernetes」だ。オープンソース化、GoogleやMicrosoft、Oracleといった大手が関与する安心感からKubernetesへの技術投資が進み、ここ1年でデファクトスタンダードと呼ばれるような存在に急成長した。
GoogleはオープンソースコミュニティにおけるKubernetes開発で主導的な役割を果たす一方で、同社はアプリケーションのデプロイ、更新、管理、スケールを簡単にするGoogle Kubernetes Engine (GKE)をGCPに用意してKubernetesの活用をサポートした。そうした活動が、今Google Cloud躍進の追い風になっている。
Kubernetesのすさまじい普及と共に、Kubernetesにサービスメッシュをもたらす「Istio」が注目を集め始めている。複数のコンテナを連携させながら容易にスケールできるようになる中で、その仕組みを活かせるアプリケーションのマイクロサービス化が支持され始めたからだ。それをプラットフォームとして活用するには、マイクロサービスの管理やコントロールを一元的に行う必要がある。Istioは、様々なマイクロサービスをシームレスに接続し、ネットワーク全体でポリシーの設定、セキュリティのための暗号化通信や認証、モニタリングを行える手段を提供する。Istioもオープンソースで開発されており、まもなくバージョン1.0に到達する。
Kuberneteに対するGKEと同じように、KuberneteにIstioを組み合わせたクラウド利用をサポートするためにGoogleが用意したフルマネージド環境が「Cloud Services Platform」である。
インテリジェントなトラフィック管理を提供。API管理サービスとしてApigeeが統合されている。エンタープライズのニーズを満たすセキュリティやガバナンス、モニタリングを、複雑なクラウド環境全体でシンプルに利用できるようにする。GKE Serverlessアドオンや、オープンソースのサーバレスフレームワーク「Knative」などサーバレスもサポート。開発ツールとして、フルマネージドのCI/CD環境「Cloud Build」を備える。
GKE On-Premは、文字通り、マネージドKubernetesをオンプレミスにもたらす。オンプレミス版のGKEである。Cloud Services Platformにも含まれており、コンフィギュレーションの編集、ポリシー設定、オンプレミスまたはGCPへのアプリケーションのデプロイなど、GKEと同じツール、同じルック&フィールで全てを扱える。
この日の基調講演のタイトルは「Building a Cloud for Everyone」だった。Google自らオンプレミスのソリューションを手がけたのも、クラウドへの移行を加速させるためである。キーワードはモダナイズだ。「Googleをエンタープライズ企業と見なすなら、正確にはモダンなエンタープライズ企業です」とGreene氏は。GKE On-Premを用いることで、顧客がそれぞれのペースやニーズに合わせてクラウドへの移行を進められ、しかも全てをクラウドに移行することなく、コンテナにラッピングして既存のオンプレミスのアプリケーションをモダナイズできる。
「全ての環境にわたる一貫したハイブリッドプラットフォームは今後しばらく、多くのビジネスにとって自然な選択になる」とHölzle氏は予測する。だから、クラウドの長所をオンプレミス環境に拡大することは「顧客にクラウドをもたらすことなのです」と同氏は語った。