5つのキーテクノロジーでIoT市場での成長を狙う
1つ目のSystem Partitioningは、システムの完全性を担保するための技術。将来的には、個々のアプリがそれぞれに異なる安全性の担保の方法が適用され、それらが連携していくことが想定されている。同社では、仮想化を中心としてフォーカスしていくとする。
2つ目のWorkload Consolidationには2つの技術が考えられるという。1つは共通プラットフォームに対し、物理的に分かれたデバイスを統合させる手法で、自動車や航空機のアビオニクスの分野で仮想化技術として採用されている方法だという。もう1つは、ITとOTを近づける形での統合。クラウドからエッジへ、エッジからクラウドへとワークロードを柔軟に移行することが求められる手法であり、管理性や拡張性を重視する必要があるとする。
3つ目のIT Scalability / OT Integrityだが、従来、産業分野の多くは、それぞれの要件に応じる形でカスタマイズが施されたインフラを活用してきた。往々にして、カスタマイズされたハードウェアのうえに、カスタマイズされたソフトウェアが載り、その上でカスタマイズされたアプリケーションが動く、という状態で、新たに世代交代をさせようと思うと、世代ごとに実装をやり直す必要があり、柔軟性や開発容易性、短TAT化といった課題があった。これがITの分野のように、汎用型コンピューティングを活用することで、ハードウェアを切り離した形でアプリケーションを活用することができ、結果として、素早いイノベーションの創出と、テクノロジーの発展の両方の恩恵を受けることができるようになるという。
4つ目のMachine Learing(ML:機械学習)。いわゆる組み込みAIの分野だが、従来の組み込みシステムは、まずはハードウェアありきで開発が行なわれてきた。しかし、本格的にMLを活用するためには、それと真逆のアプローチを取る必要があるとする。具体的には、最初に解決すべき課題を明確化し、それを解決するにあたってベストなソリューションはなにか、MLの最適なフレームワークは何かを検討する必要があるとする。特に近年は、ニューラルネットワーク1つとっても、さまざまな種類のものが登場しているほか、アクセラレータもGPUのほか、FPGAやASICなど、多岐にわたる状況であり、「だからこそ、再利用性の高い演算プラットフォームが必要になる」と同社では汎用型コンピューティングプラットフォームの活用の重要性を強調する。
そして5つ目のFluid Computing。4つ目のMLまでは、これまでも同社が、何かにつれて語ってきたこと、もしくはその延長線上にある話であったが、同社がこの技術トレンドに触れることは、ほとんどなかった。要は、コンピューティングの歴史としては、メインフレームの中央集約型から、PCの登場による分散型への移行、そしてモバイル機器とクラウドの登場による再び中央集約型へのシフトとなり、IoTではどうなるか、を考える必要がある、ということとなる。この流れに従うわけではないが、最近のIoTのトレンドは、リアルタイム性が重視されるシステムを中心に、データセンターにデータを送って、処理をしていたのでは間に合わないので、エッジ側にインテリジェント性を持たせて処理をする、という分散型を志向する向きがあるが、同社としては、すべてがすべて、そういうわけではなく、MLの能力を活用するためには、エッジからクラウド、クラウドからエッジまでの一連のスキームにおいて、すべてを安全性を担保した状態で接続する必要があるとする。また、それができるのがウインドリバーであり、かつそれにより、カスタマが望むポイントでMLを活用できる枠組みを構築できるようになるとした。
なお、「ウインドリバーは、VxWorksやLinuxといったOSで知られるが、近年はポートフォリオの拡大を進め、IoT構築を支援するTitanium CloudやOTAアップデートを支援するHelix edge sync、フルシステムシミュレーションを可能とするSimics、IoT機器などのライフサイクルを通して管理できるHelix Device Cloudなど、さまざまなIoTに関連するソリューションを提供してきている」と同氏が説明するように、同社は近年、産業/IoT分野にITの概念を取り入れる取り組みを中心に、ポートフォリオの拡充を図ってきた。「IoTの発展に伴い、我々のカスタマも、従来の機器ベンダだけではなく、サービスプロバイダなどに広がっている。そうした企業は産業分野に対する知見が不十分なことも多い。そうした企業が、IoTを武器に、そうした分野に参入し活躍することを支援する準備が我々にはある」(同)とのことで、新生ウインドリバーとしても、IoTの産業分野での活用拡大を背景に、事業の拡大を計っていきたいとしていた。