VRを映画館で体験する、いわば"VR映画"ともいえる新たな興行形態「映画館で、VR!」の体験上映が、7月2日より新宿バルト9で実施される。
これまで、コンシューマー向けのVR体験と言えばアミューズメント施設や家庭でのスマホ利用が中心、かつ「ひとり」で行うことが一般的だった。しかし、この興行形態では、映画館での映画鑑賞と同様、多人数が同時にVRコンテンツを味わうことになる。
本稿では、6月26日に開催された発表会の模様をお届けする。
オープンプラットフォーム展開でVR普及めざす
「映画館で、VR!」の提供を手がけるのは、VAIOと東映、クラフターの三社共同で立ち上げた「VRCC事業」。コンテンツホルダーの東映、制作機能を持つクラフターが参画している一方で、同事業はオープンプラットフォームとなっており、他社IPのVRコンテンツの展開や、他の制作会社の参画を歓迎する方針をとっているのが大きな特徴。「VRCC事業」を3社の外にも開くことで、VR体験のさらなる普及を加速する狙いだ。
東映 取締役 企画調整部長 村松秀信氏によれば、映画『アバター』のヒットで一躍メジャーな存在になった3D映画や、今もシアター数が増えているという4DX、IMAXなど、映画館独自の体験が含まれる興行形態に対するニーズの高まりから、体験型シアターの次の形態として この事業に着手したという。
また、同事業は3Dシアターなどのように専用のシアターを用意する必要がないため、適切なコンテンツが用意できた時点で通常シアターを適宜切り替える、フレキシブルな運用が行えることをアピールした。
「奥行き」感じるワイヤレスHMDを使用
この興行で用いるヘッドマウントディスプレイ(HMD)とSDKの開発を担当したのがVAIO。中国のHMDメーカー・PicoのワイヤレスHMD「Pico Neo」(画面解像度:2880×1600、フレームレート90Hz)に対して「映画館で、VR!」向けのカスタマイズを行った。
本格的なVR体験に必要なセンサーを搭載しており、XYZ軸のそれぞれに回転を加えることができる「6DoF」に対応。これにより奥行きの表現が可能になり、投映される対象に対して近づくなどの体験が可能となるため、没入感を高めることができるという。
「映画館で、VR!」を導入する際には映画館側の設備は問わず、無線アンテナとサーバの設置のみ。サーバからの単純操作で全HMDの再生管理を行える機能やユーザーの誤動作を防ぐ機能を備え、コンテンツの盗難防止についても複数の機能によってプロテクトしている。
VAIO 執行役員副社長 赤羽良介氏は、高機能でありながら無線でスタンドアロン稼働するHMDを採用しているため、アミューズメント施設のような1対1のアテンドは必要なく、基本的には観客自身が着脱を行うフローで運用可能という手軽さを強調した。