――「FUTURE LIFE FACTORY」は設立からたった1年で「レッドドット・デザイン賞」を受賞するなど、成果をあげていますね。

編集注:「レッド・ドット・デザイン賞」は、国際的なデザイン賞。最も歴史の長いプロダクトデザインにくわえ、コミュニケーションデザイン、デザインコンセプトの3部門に分かれている。「WEAR SPACE」と「UCHIMIZU」が、デザインコンセプト部門における優秀賞「Best of the Best Award」を受賞した。

姜氏: 実は順序が逆で、立ち上げからすぐの目標を「『レッドドット・デザイン賞』デザインコンセプト部門の受賞」に設定して急ピッチで動き出しました。立ち上げの翌月が応募締め切りでしたので、1カ月半でアイデア出しをやりきり、私たちが独自に設定した「5つの基軸」(新規性があるか、事業性があるか、近い将来に来るか、社会課題を解決しているか、パナソニックの未来にふさわしいか)で評価を行い、絞り込んだ案を具現化して応募したという経緯です。

「WEAR SPACE」は、弊社のヘッドホンに使われるノイズキャンセル技術と視界を遮るパーテーションを組み合わせた、パーソナル空間を身に着けることを目的にしたウェアラブルデバイスです。また、「UCHIMIZU」は、ヒートアイランド現象という課題へのアプローチに、日本の「打ち水」を用いる提案です。そして「+WINDOW」は、光・風・音で表現された新しい「窓」で、窓のない空間に取りつけることができます。

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  • 「WEAR SPACE」を実際に装着。これを装着して業務を行えば、集中して行うべき作業のオン・オフが切り替えやすく、かつ対外的にもステータスがわかりやすいと感じた。

――「WEAR SPACE」は先ほど装着させていただきましたが、オフィスの執務スペースでの利用が広がると面白そうですね。これらの製品化は行われますか?

「HARVEST」

食のプロジェクト「HARVEST」

内田氏: いずれも可能性を検討しているところですが、「WEAR SPACE」は製品化にむけて動き出しています。ただ、社内の開発ラインは先々まで予定が定められているため、そこに割り込むかたちになるのはあまり現実的ではありません。そこで、社外の方々とも協業して開発を進めるなど、手段をあらかじめ固定して進行するのではなく、柔軟に結実までの道筋を考えていきたいと思います。

また、これに加えて、食のプロジェクトである「HARVEST」も事業化をめざして準備を進めています。

――2年目となる「FUTURE LIFE FACTORY」の活動は、引き続き「未来思索」で行っているようなコンセプトデザインの発信が中心になるのでしょうか? それとも異なる動きがあるのでしょうか?

姜氏: 昨年は、短期間で複数のコンセプトデザインを発表できた一方で、多数のアイデアが発散していった部分がありました。そこで、今年は「ビジョン発信」で作り上げた世界観を基軸に活動していきたいと思います。

足立氏: また、これから本格的に情報公開する予定のプロジェクトに「nemunoki project」というものがあります。これはアプライアンス社のみならず、パナソニックの4つのカンパニーに横串を通すようにして、家電や住宅、B2B、ソリューション、車載など、多岐にわたる事業領域のデザイナーが集まってビジョンを創るプロジェクトです。

「FUTURE LIFE FACTORY」は固定メンバーではなく、2年程度の期間でローテーションしていくことになっていることもあり、メンバーは流動的に、各カンパニーから集うことも考えられます。

――活動における指標やマイルストーンのようなものは何か設定されていますか?

内田氏: もともと変化へ対応するために作られた組織で、メンバーの入れ替えもありますから、毎年プランニングは変わっていくと考えています。「時代の豊かさ」を追求する姿勢は礎としつつ、在籍メンバーが都度議論して方針を定めていきたいです。

姜氏: 中期計画、あるいは「3年先のチーム」など組織を軸に考え始めてしまうと、既存の組織構成と似通っていってしまい、別働隊として組織した意味がなくなってしまうので、自発的な活動を大切にしていきたいです。

――最後に、直近の目標や、現在進行形で動いているプロジェクトなどあれば教えてください。

姜氏: 今年は、昨年度から行っている活動に加え、デザイン領域を拡大するような取り組みを行っていく想定です。たとえばCSRなどの会社の活動にデザインチームが参画していくようなイメージですね。

また、これまでは広報に一任していた「パナソニックデザイン」の発信にも、より一層デザイナーの思想を入れていくことで、対外的な情報発信を強化していけたらと考えています。

足立氏: これからの「豊かな暮らし」を考えるにあたって、住宅内や機器単体の提案に終始してしまうと、限界が出てきてしまうと考えています。そこで、先ほども話題に上がりましたが、カンパニー横断プロジェクトとして「nemunoki project」を立ち上げました。

パナソニックが持っている4つのカンパニーを越境して考えて、事業部の枠を超えて提供できる暮らしを模索するためのもので、今は「住まい」と「AI・ロボット」にフォーカスしています。すでに弊社の共創空間「Wonder LAB Osaka」で社内外の方々とアイデアソンを実施するなど動きはありまして、いずれイベントなどでご披露できればと思っています。

――ありがとうございました。