世界は絶えず変化しています。これは、自動車業界を見れば明らかです。今後、自動車に限らず私たちの移動手段がどのように変わっていくのか、その可能性は計り知れず、非常にわくわくするものでもあります。現在、コネクテッドシステムの分野では着々と技術革新が進んでいます。それにより、自動車の電子化、自動運転を実現するシステム、ほかの自動車や周辺のインフラとの通信方法に大きな変化が引き起こされています。いずれ、私はこのようなトレンドや、現在の自動車が直面しているテストの問題にどのような影響が及ぶのかといったことを徹底的に調べるつもりです。今後の変化にも注視すべきであることは間違いありません。これまで、テストを行おうにも、スケジュールの短期化やECU(電子制御ユニット)の中央集約化、エンタープライズ向けデータ管理ソリューションの欠如といった事柄が影響していました。そのことが、安全で信頼性の高い自動車を生産することを妨げる要因になっていました。市場では、こうした既存の問題が解決される可能性が見えてきています。それぞれに対する答えがどのようにしてもたらされるのかを理解するために、自動車業界と近い位置にある業界にも目を向けてみることにしましょう。
テスト用のコンフィギュレーション
フランスの小説家Jean-Baptiste Karrは、「the more things change, the more they stay the same(物事はどんどん変わるように見えるが、本質はなかなか変わらない)」という意味の言葉を残しています。私は、世界中の自動車メーカーやTier 1サプライヤで検証(バリデーション)を担当する技術者と話をしてきました。そのとき、会話の主題は異なっているのに、会話の内容は不思議なくらい似ていることに気づきました。「テストを実施するための時間が十分にとれない」、「新しい装置を導入するための予算がない」といった発言を何度も耳にするのです。現在では、多くのシステムが安全性を重視したものとなっています。安全性や信頼性を保証するためには、そうしたシステムに入力を与えたり、直接制御したりするデバイスについて、きちんとしたテストを実施することが重要になります。言い換えると、そうしたテストに大きな課題があるならば、それをぜひとも解決すべきだということです。
このような背景があるわけですが、最も重要なタスクとしては「テストの設定を行う」というものが挙げられます。かつて、ヘッドライトやシートといった車載コンポーネントはシンプルなものでした。しかし、現在では、あらゆるコンポーネントが、ECUやセンサ、アクチュエータ、さらには車内のほかの部分との通信機能を備える複雑な電子機械システムに変貌しています。そうしたサブシステムの動作を検証するにはさまざまなテスト手法が必要になります。従来、ドアや窓、ステアリングコラム、ライト、シートについては、物理的な性能と寿命を検証するための物理的なテストだけが行われていました。機械のテストを担当するグループは、シェイカーのテーブルや環境チャンバー、アクチュエータ、データ収集システムなどのツールを使用していました。昨今では、そうした車載コンポーネントもセンサやコンピュータ、制御機能を搭載するようになりました。つまり、そうしたコンポーネントは、パワートレインの動作を反映させた設計/テストの手法を必要とするサブシステムへと進化したのです。設計チームは、このような新たな現実に適応するために、モデリング、ソフトウェア設計、回帰テスト、HIL(Hardware-in-the-Loop)、システムの統合といったことに取り組んできました。ただ、多くの時間や費用を費やしても対応できないテストの問題が発生していることは事実です。
この問題に対応するには、特定のテストに特化し、プログラムによって自動化できるツールが必要です。つまり、時間の長さや温度、天気の要素、衝撃力などのさまざまな変数を使って同様のテストを自動的に繰り返し行えるツールです。このようなツールは、自動車業界の近くに位置する半導体業界などでも使われています。半導体業界では、そうしたツールによってテストにかかるコストを全体的に削減することに成功しました。その際、ツールのベンダーは短期間のうちに市場に参入することができました。これと同じトレンドは自動車の業界でも見られるようになるでしょう。実際、NI FlexLoggerなどは、そうした特化を果たした製品の一例だと言えます。同製品は、対話式にコンフィギュレーション(構成)できるデータロギング機能を提供します。