もう1つの重要なトレンドは「規制動向」である。5月に欧州で施行開始となるGDPR(一般データ保護規制)を前に、企業はデータプライバシーの問題に取り組まなくてはならない。リアルの店舗にデジタルのWebサイトやモバイルアプリと、さまざまなチャネルを動き回る一人の顧客の行動を、別人と見なすことなく理解しなくてはならない。しかも、顧客が利用に同意しているデータだけを使って理解しなくてはならないのだ。プライバシーを尊重しながらも、顧客が喜ぶ優れた体験を提供するには、多くのブレイクスルーが必要になる。

「CXプロフェッショナルは変化に適応しなければならない」とケイヒル氏は訴える。あらゆる難題を解決することを期待されているわけであり、荷が重いと感じることもあるだろう。しかし、変化に対応できないのであれば、あなたの顧客は競合他社に移ってしまうことになりかねない。そうならないようにするのが、組織内のCXプロフェッショナルの役割だとケイヒル氏は話した。

全社的な課題としてのCX、組織での役割ごとに異なるテーマ

Oracleは、Oracle CX Cloud Suiteの提供により、CXという大きな課題に取り組もうとするプロフェッショナルたちを支援している。同製品は、マーケティング、セールス、コマース、カスタマーサービスを包括するクラウドアプリケーションの統合セットである。ケイヒル氏は、CXプロフェッショナルたちはそれぞれの組織の役割ごとに少しずつ異なるプレッシャーに直面していることを次のように解説した。

マーケティングでは、ノイズの中から購買につながるシグナルを探さなくてはならない。ターゲットとする顧客に対し、適切なタイミングで適切な情報を複数のチャネルから同時に提供する必要がある。コマースでは、常にパフォーマンス評価目標の達成を課せられている。時間単位で施策がうまく行っているか否かを評価し、達成のための対策を講じることが求められている。

セールスには、最も費用対効果が高く予測可能な方法を用いた売り上げの創出が期待されている。比較的容易に実現できそうに思えるが、「既存のSFAツールではプロセスの自動化に制約がある」と、ケイヒル氏は指摘する。カスタマーサービスは、旧来のコストセンターから、顧客のLTVを高めるという新しい役割を担おうとしている。人間に依存する部分の多い対応の自動化やセルフサービスエージェントの導入を課題としている。

直面している課題は、部門ごと、会社ごとに少しずつ異なっていたとしても、すべてのCXプロフェッショナルの共通テーマは「いかに変革をリードするかにある」というのがOracleの考えだ。

顧客の高い期待に応えるため、現状から抜け出したいと望んでいる企業は多い。ケイヒル氏は、最近のOracleが実施した「CXプロフェッショナルのデジタル変革に関する取り組み」に関する調査結果を紹介した。

CXプロフェッショナルの48%は「組織がデジタルに十分にかつ迅速に投資していない」、55%が「もっと顧客中心の組織にするための変化に伴う混乱を恐れている」と回答している。けれども、65%のCXプロフェッショナルが「革新を進める準備ができている」と回答していることは、明るい判断材料だとケイヒル氏は語る。モダンな顧客体験の設計と提供に前向きな姿勢を示す彼らこそ「CXヒーロー」の予備軍になる。

  • CXプロフェッショナルの48%は「組織がデジタルに十分にかつ迅速に投資していない」、65%は「革新を進める準備ができている」と回答

だから、組織はCXの課題に真剣に向き合わなければならないのだと参加者に語りかけ、「失敗するかもしれないが、それでもやり直しを続け、壁を越えることを学んで欲しい」とケイヒル氏は訴えた。Oracleの仕事は、本当の意味での顧客中心主義の組織に生まれ変わろうとするCXプロフェッショナルたちの前に立ちはだかる障壁を取り除くことにあるというのだ。

ベア氏と同様に、継続的な実験はCXに取り組むチームに刺激を与え、やればやるほどビジネスの俊敏性と革新性が増すことをケイヒル氏も訴えた。OracleのCXコミュニティは、構成メンバーが実験の過程でどんな障害に直面し、どう克服したかを学び、新しい発見を得る機会になる。小規模な取り組みから実験を始め、新しい発見を得るサイクルを続ける過程で、ロイヤルな顧客が生まれ、スピーディなビジネス成長を達成できるというのがそのためのアプローチだ。

ケイヒル氏は、「ここに来ている皆様は、取り組みに成功する可能性を秘めたCXヒーロー。OracleはCXを探求しようとする皆と同じ列車に乗るパートナーでありたいと思う」と結びの言葉を述べ、壇を降りた。