では実際、どのように「CrossX Re-marketing AI」を活用して、成果を出したのか。具体的な取り組み内容について聞いてみた。
AIを使ったマーケティングの効果とカルフールが描く将来像
取り組み開始当初、自社で広告やバナーをデザインし、いくつものキャンペーンを実施したカルフールだったが、思うような成果はなかなか得られなかったという。その理由についてジル氏は次のように分析する。
「ターゲットを見誤っていたことが原因だと思います。実店舗では女性客が多かったこともあり、我々はメインターゲットを女性に設定していました。しかし、『CrossX Re-marketing AI』を使うことで、意外にも男性のコンバージョン率が高いということが明らかになったのです。Appierの担当者からもターゲットを男性にしてみてはどうかとアドバイスをいただきました」
実店舗とは異なり、オンラインでは男性のコンバージョン率が高いことがわかった。そこから、ジル氏はオンライン独自の戦略へと舵を切る。
さらに、複数のデバイスを横断した特定ユーザーの行動と嗜好を分析できる「CrossX Re-marketing AI」では、通勤途中はスマホやタブレットで情報検索を行い、仕事後に自宅のパソコンでショッピングを行うケースが多いことが分かった。
そこで、同社では「今朝、通勤中に見ていたアイテムに対して、夜パソコンにリマインドする」といったアプローチで購買を促進。結果、徐々にコンバージョンが上がり、ユニークユーザー数も増加していったという。
「結果として、サイトのページビュー(PV)は前月比平均50~60%増で推移し、購入は20~25%上昇。収益も20~25%の増加を記録することができました」と、ジル氏は成果を示した。
順調にオンライン事業が成長の波に乗ったカルフール。今後はどのようにAIを活用した施策を考えているのだろう。
「たとえば消費財がなくなることをAIが予測してレコメンドをするサービスがあればきっと便利ですよね。パーソナライズ化された情報から、次はこんなアイテムがほしくなるのではないかという予測をもとに提案してくれる、そんなサービスを目指したいと考えています」
忙しい生活をしていると、いくら店舗に行く必要のないオンラインとはいえ、数万、数十万のラインアップから欲しい一品を探し出すのは、確かに億劫だ。たとえば、トイレットペーパーを購入してから1カ月ほど経過したころに、AIが「そろそろ補充する時期ではないですか」とレコメンドしてくれれば、「いつのまにかトイレットペーパーの予備がない」という失敗も防げるかもしれない。
「そのためには、これからもAppierの助けが必要だと考えています。彼らの提供しているAixonを活用することになるでしょう。そこに選択の余地はありません」
ジル氏は力強く答えた。
「ただ、台湾はまだ保守的な社会なので、いきなりすべてをAIに代替すると、不安に感じる消費者が出てくるかもしれません。そのあたりを意識しながら、取り組みを進めていきたいですね」