--AIやアナリティクスについては、AIエンジンを使ってストレージ利用の予測分析を行う「Pure1 Meta」を展開されています。開発の経緯を教えて下さい。

リー氏:Metaの進化は、われわれの製品開発の進化とともにあります。設立以来、いかに簡単にストレージを運用管理できるかに取り組んできました。われわれの製品の大きな魅力はスピードと効率化にあり、この2つは新規のお客様には高く評価されています。

ただ、リピートするお客様はこれとは別の価値を高く評価していただけます。つまり、どれだけ導入が簡単だったか、運用管理がいかにシンプルだったかです。

もともとPure Storageには、自律的に障害を修復するための機能が備わっていました。出荷済みのPure Storageから情報を収集していくと、あるワークロードに、ある症状を抱えるお客様の事例は同じワークロードを稼働させている他のお客様の参考になります。

そうしたケースがたくさん増えていけば、統計情報を機械学習やAIなどの技術を使って予測型の分析を行うことができるようになります。そんな中で登場したのがMetaです。お客様の運用管理をさらに効率化できるという観点から、機能を拡張してきたのです。

--ストレージに対する予測分析は、さまざまなベンダーが取り組んでいます。違いはなんですか。

リー氏:昔からDBA(DataBase Administrator:データベース管理システム)の悩みであり、腕の見せどころはキャパシティプラニングでした。数年後に、どんなVMのワークロードをどのくらい走らせるために、どのくらい容量や性能が必要になるか。従来は経験とセンスで予測していました。

Metaは、ストレージコントローラを変えたり、アレイを追加したりすることで、どのくらいのワークロードが必要になるかを統計的にプロアクティブに予測し、レコメンデーションします。自社だけでなく、他社のデータも自社の問題の改善につなげられる点は、Metaの優位点の1つです。

--収集するデータ量はどのくらいのなるのでしょうか。

リー氏:1日当たり8000万のデータポイントからデータを収集していています。分析に利用しているデータの容量9PBほどです。新しいアナリティクスの技術を使って新しいレコメンデーションを行うために、データ分析基盤もパブリッククラウドからFlashBladeに移行したところです。

--パブリッククラウドというのは?

リー氏:Amazon S3などにデータを蓄積していました。これら、MetaのデータはFlashBladeで分析することが、まさにぴったりのデータです。そこで、S3からFlashBladeに移行して、より高速に素早く分析できるようにしたのです。

--Metaの成果がわかる数字はありますか。

リー氏:Metaによる予測分析が進むと、障害に対する問い合わせが少なくなります。障害が発生してカスタマーサポートへの問い合わせが来る前に、われわれがお客様に問題を知らせて対処するからです。現在はわれわれからの問い合わせによって障害をプロアクティブに改善したケースは全体の7割に上ります。

改善率が高まるのは、サポートチームの中にエンジニアがいて、顧客が抱えたトラブルの原因を直接分析できるようにしているからです。過去のケースに照らしてどんな障害が起こるのかをエンジニアの知見を交えて予測しています。

--現在、可用性はどの程度を実現しているのですか。

リー氏:99.9999%です。年間で約31秒ですが、これには障害による停止時間だけでなく、アップグレードやメンテナンスによる作業時間も含まれていることに注意してください。われわれでは、すべてのメンテナンスがオンラインでできるよう設計されています。同じ99.9999%でも他社では、それを含んでいないケースがあります。

--企業では、パブリッククラウドからオンプレミスやプライベートクラウドに戻るという動きが進んでいるようです。こうした状況をどうご覧になっていますか。

リー氏:世界的に進んでいると思います。昨年、われわれが調査会社と一緒に9000人のCIOに調査を実施したところ、パブリッククラウドを使ってから1~2年以内にオンプレミスに再びデータを移行した企業はほぼ半分を占めました。

こうした動きは、われわれにとっても大きなチャンスです。パブリッククラウドに移行して皆が気づいたのは、コスト高やセキュリティ、そし障害への予見が不確実であることへの不安が大きな理由です。

われわれは、設計段階からクラウドの良さを取り込んでいます。それは、アジャイルに環境を構築し、エラスティックに拡張することで、よりシンプルに管理できるといった点です。われわれの製品は、クラウドとオンプレミスのメリットを包括したソリューションだと自負しています。

--ハイブリッドクラウド環境も増えています。管理をシンプルにするポイントは何でしょうか。

リー氏:社内では管理のフィロソフィーとして「API First」を掲げています。ITインフラを従来のように人の手を煩わせながら管理するのではなく、DevOpsの取り組みの中で自動化を進めていくことを心がけています。

コンシューマ製品のように使いやすいUIを提供することも重要なのですが、アレイが増え、システム環境が複雑になるとシンプルさは失われていきます。管理対象が1000台になれば1台1台にコマンドを打つことは現実的ではありません。

そのため、製品を設計する時は、コマンドラインやWebブラウザでのUIよりも、APIでプログラミングできるかどうかを重視しています。アレイが増え、システムが複雑化しても1人の管理者がAPIを使って簡単に管理できます。

--日本でのビジネス状況はどうですか。

田中氏:非常に好調です。勢いが加速していて、社内でも日本を含めたアジア・パシフィックへの期待がさらに高まっています。

  • ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏

    ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏

日本では5年間の実績があり、既存ユーザーからのリピートも増えています。特に、無停止でのアップグレードやメンテナンスができることに「本当に便利だね」という声を多数いただいています。

われわれは、これまでドアオープナーのような立ち位置だったと思います。現在は、最初なので試すという段階から、信頼した上で拡張するという段階に移行してきたように感じています。特に、ビッグデータ分析や機械学習、AIといった需要は日本でも急速に立ち上がっています。そうしたニーズにスピーディーに応えていきたいと思います。

リー氏:そうですね。日本のお客様の声に耳を傾けることを常に心がけています。アナリティクスに対しては、非常に高いニースがあります。それらをよく聞きながら、製品開発に活かしていきます。