一方で、IBMリサーチのTalia Gershonシニアマネージャーは、「IBM Q システムに対する期待の声は大きく、すでに南極大陸を含めた7大陸からの利用があり、いままでに行われた実験回数は280万回以上に達している。内容は、理論のコード化および検証、ハードウェアのテスト、新たな応用分野の発見、量子コンパイラの開発などである。研究者だけでなく、高校生が使用している例もある」と述べた。

  • IBMリサーチのTalia Gershonシニアマネージャー

ゲストとして登壇したIBM Q Networkに参加している慶應義塾大学 理工学部長・理工学研究科委員長の伊藤公平氏は、「これまでに出回っていた量子コンピュータは、加減乗除ができなかったり、特定分野に最適化し、それしか問題が解けないものであったりした。だが、IBM Q システムによって、初めて汎用的な領域に使える量子コンピュータが登場した。これは偉大なことである。コンピューティングの未来は、量子コンピュータである」と発言。

  • 慶應義塾大学 理工学部長・理工学研究科委員長の伊藤公平氏

また、同じくIBM Q Networkに参加しているサムスン電子のSeongjun Parkバイスプレジデントは、「量子コンピューティングは様々な分野での応用が利く。サムスンは、量子コンピューティングの最先端企業であるIBMとの連携によって、どんなものに使えるのかを知りたかった。まずは、社内に専門チームを作り、量子コンピューティングに対する理解を深め、インパクトを推定した。マイクロエレクトロニクス、ディスプレイデバイス、AIシステムでの活用を想定している。量子コンピュータは、まだ探求段階だが、今後のインパクトを考えると無視できないものになる」と述べた。

  • サムスン電子のSeongjun Parkバイスプレジデント

最後に、IBMリサーチのKrishnaディレクターは、「古典的なコンピュータの性能がさらにあがれば何でも解決できると思っている人が多いだろうが、そうではない。苦手なものがたくさんあり、それはいくら訓練しても避けらない。量子コンピューティングならばできることがなにか、ということを、エコシステムを通じて導き出したい。様々な種類の問題を解決できるはずだ」と語って、講演を締めくくった。