降着装置と灯火類
A350-1000をA350-900と見分けるポイントの1つが主脚。A350-900は四輪ボギーだが、重量が増したA350-1000は六輪ボギーにして、タイヤ1つ当たりの荷重を下げている(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第30回)。A350-1000以外ではボーイング777が六輪ボギーである。タイヤ1つ当たりの荷重が大きくなると舗装の補強が必要になる場合があるが、タイヤを増やせばそれを回避できる。つまり、空港側としては助かる。
そこで、A340のように脚の数を増やすと、重量増加に加えて収納スペース確保という課題も生じるので、数を増やさずにタイヤを増やしたのだろう(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第26回)。無論、機体の重量増に合わせて、脚柱は強化されていると思われる。
一方、首脚は一般的な2輪構成。真正面から見ると、首脚の脚柱付近に取り付けられたタキシー灯がよくわかる(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第98回)。タイヤの直上に付いているタキシー灯は、真正面を照らす灯火に加えて、右方向と左方向を照らす灯火を加えた3個構成だ。
機首の両側面からは、ピトー管や迎角検出用のベーンなどが突出している(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第43回)。最上部・右上の赤い点線で囲まれた部位にあるのは静圧孔と思われる。凍結して穴が塞がれたら一大事だから加熱していて、それで高温警告があるのだろう。
下の写真は、左舷側の翼端灯とウィングレット(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第87回)。A350のウィングレットは、クルンと丸みを帯びた特徴的な形態をしている。エアバスでは同機の主翼について「飛んでいる鳥のような、自然に学んだカタチ」と説明している。翼端灯の色は「左翼だから赤い」。覚えていますか? (「航空機の技術とメカニズムの裏側」第98回)
主翼後縁のフラップはシンプルな構造で、ダブルスロットだのトリプルスロットだのという複雑なものではない(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第10回)。シンプルな構造で同じ結果が出るなら、そのほうが軽くなり、整備の手間が減り、コストダウンにつながる。なお、下の写真で左端に映っているパイプは燃料投棄用(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第7回)。
コックピット
最後に、コックピットの写真を。エアバス機で通例となっているサイドスティック方式で、それとFBW(Fly-by-Wire)を組み合わせている。日本航空でA350-900/-1000を導入すると、同社でサイドスティックは初めてではないだろうか?
そのサイドスティック、F-16やF-35みたいな戦闘機だと常に右手で操作するが、A350は左側の機長席だと左手で、右側の副操縦士席だと右手で操作する。勝手が変わって混乱しないんだろうかと思うが、すでにA320以来の実績もあるし、問題はないのだろう。
計器盤はタッチスクリーン式の多機能ディスプレイを6面並べた構成だが(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第35回、第36回)、6面とも同じハードウェアを使用しているので、予備部品は統一できる。上の写真では見当たらないが、本当はHUD(Head Up Display)が左右両方に付くはずだ(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第51回)。
正副操縦士席の間に設けられたセンターペデスタルには、スロットルレパーやフラップレバーに加えて、FMS(Flight Management System)を操作するためのCDU(Control Display Unit)などが並んでいる(「航空機の技術とメカニズムの裏側」第107回)。下の写真を見ると、CDUはスロットルレバー左右の突出物の手前側にある。