e-AIが活用できる工場とは?
e-AIを武器にスマートファクトリ市場をOT側から固めていこうというのがルネサスとR-INコンソーシアムの戦略だが、ものづくりの工場といっても、さまざまな分野のさまざまな規模のものがある。
例えば半導体工場。特に300mm対応の前工程の工場は、工場として考えると、非常に最先端な部類に入る。ウェハの搬送はFOUPなどに保管された状態で、搬送レールの上を自動で運ばれ、各装置にどれくらいのウェハが処理待ちをしているかを監視し、空いている装置に優先的に受け渡す、といったことは当然のほか、前段の装置、後段の装置とウェハの特性の変化などを情報としてやりとりするフィードバック、フィードフォワードを行うことで、自動的に歩留まりの向上を図るといったことも行われており、そこに人が介在する余地は少ない。ただ、そうした先進工場であっても、同社が自社保有の那珂工場で行ったe-AIを用いた実証実験によれば、6か月で不良ウェハの製造ラインへの投入数の減少による生産数の増加など5億円規模の価値を生み出すことに成功したという。
横田氏も「従来はハイエンドな工場が対象。半導体や液晶工場がインテリジェンス化を進めてきたが、そうした省人化、自動化がメカトロニクスの工場や組立工場、果ては食品加工工場などでも、この1-2年で求められるようになってきた。従来になく市場が拡大してきている」としており、そうした拡大する市場に対し、どういった取り組みをしていくのかについても、「ナレッジをデジタル化することで見える化し、異常検知を実現したり、予知保全による止まらない工場の実現、そして人手に依存しない省人化を実現しつつ、高い品質を維持する」といったところに市場が拡大していくとの見方を示す。
また、同社は、2017年11月に設立されたEdgecrossコンソーシアムにエグゼクティブ会員として参加している。これにより、エンドポイントのみならず、クラウドとの間に位置するエッジ層での取り組みが加速することとなり、横田氏も「半導体メーカーという立ち位置から、プラットフォーム化に貢献していきたい」と今後に期待を寄せる。
なお、こうした取り組みが具現化した1つの象徴が、同社が2017年11月に発表した「AIユニットソリューション」となる。すでにパートナー企業である明電舎およびアドバンテックが、ルネサスのリファレンスソリューションをベースとしたAIユニットを開発済みで、これを活用することで、カスタマがe-AIを手軽に活用できる体制も整いつつある。「2017年11月にAIユニットを発表して以降、すでに30社を超す顧客と協業に向けた商談がスタートしている」と、横田氏は、その好調ぶりをアピールする。また、「e-AIを活用したビジネスも、先述した産業分野の約30社に加え、それ以外の分野からも約50社ほど、具体的なビジネスに向けた商談を開始している」ともしており、非常に強い勢いが生まれつつあることを強調。2018年中には、200~300件程度に商談件数も増えていくことが期待されるとしており、今後、e-AIをビジネスの中心に据えることで、多くのパートナーと一緒に、スマート化を推進していきたいとしていた。