企業がVR/AR導入時に気を付ける点は?
針生氏は、企業がVR/ARを導入しようとすると、これまで付き合いがなかったベンダーと付き合うことになると指摘する。VR/ARに関わるベンダーは主に、システム・ベンダー、コンポーネント・ベンダー、アプリケーション開発ベンダー、サービスプロバイダーの4つに分類することができる。これらのうち、企業と大きくかかわるのはサービスプロバイダーだという。
また、VR/AR導入においては、IT部門ではなく、ビジネス部門が中心となる場合も多い。そのため、「VR/ARを導入するにあたっては、ビジネスにどう役立つかということが最優先となる。よく、VR/ARはどのような業種や企業規模に適しているかと聞かれるが、業種や企業規模よりも、テクノロジーに対する企業のビジネス戦略、成長戦略のほうが重要」と、針生氏は指摘する。
つまり、VR/ARが自社にとってどのような形で役に立つかを十分検討したうえで、導入を進めていく必要があるというわけだ。
さらに、「没入レベルが上がるほど、利用は難しくなる」と話した上で、針生氏は、VR、AR、MRの利用が進む用途を示した。VRはトレーニング、ARはメンテナンス、MRはデジタルワークスペースでの利用が特に進むそうだ。
針生氏は、VR/ARの利用推進にあたっては、カギとなるテクノロジーとしてUXを挙げた。ゲームユーザーなどの特定の層だけでなく、一般的な人が使えるようになるには、もっと洗練されたUXが必要となるという。
VR/AR導入に立ちはだかる課題とは?
最後に、針生氏は、VR/AR導入にあたっての課題を説明してくれた。実のところ、以下のように、課題は少なくない。
- 技術の実用性、安定性、標準の欠如
- 利用時の通信費用と通信環境(AR)
- 利用される位置情報や画像情報のプライバシー(AR)
- 重畳させるデータ構造と表示形式の標準化
- 導入・運用コストに見合ったビジネス面およびコスト面での効果の達成
- ビジネス・シナリオとコンテンツの難しさ
- ベンダーとの文化の違い
これらの課題のうち、最も難易度が高いのが「ビジネス・シナリオとコンテンツ」だという。
「VR/ARの導入を検討する際、今のビジネスを想定するのではなく、次のステップにいくことを踏まえる必要がある。それには、ンダー任せではなく、自ら作っていく姿勢が大事」
今回の話を聞く限り、企業でVR/ARを導入するとなると、それなりの負荷はかかるようだ。しかし、これまでできなかったことを可能にするテクノロジーである点は魅力的だ。
今、日本の企業は人手不足やグローバル化など、さまざまな課題を抱えている。自社の課題を解決しつつ、成長を果たすための道具の1つとして、VR/ARを検討してみてもよいのではないだろうか。