近年成長を続ける動画広告市場ですが、2017年は前年比63%増の1,374億円、2022年には3,000億円を突破すると言われています。そしてその動画広告市場の伸びに大きく寄与しているのが、これまでTVCMに投下されてきたブランディング予算です。ではブランディングという文脈の中で、デジタルメディアに求められていることは何なのでしょうか。ブランディング動画広告に適したメディア・広告枠とはどういったものなのか、動画を軸とした広告プラットフォームを展開しているCMerTVにインタビューを行ってきました。

お話いただいたのは・・・

株式会社CMerTV 取締役COO 森英次郎氏
1972年生まれ。アメリカ留学中に日本車の個人販売を開始、フォード社から独占販売権を持ちかけられたことをきっかけに帰国し起業。その後独占販売権を譲渡し総合広告代理店(現)DACホールディングスに入社。最終的に(現)DACホールディングス常務取締役COOを勤め、全事業の増収増益を実現。株式会社CMerTVには、五十嵐代表に声を掛けられ取締役COOに就任した。

動画ブランディングはテレビとスマホの掛け合わせの時代へ

スマホの普及によりユーザーの行動様式が変わる中で、ブランディング広告にはどういった変化がありましたか?

ブランディングにおいて、テレビの力が大きいことは間違いありません。インパクトのある映像と音で、消費者に商品やサービスを強く印象に残すことが出来るのはテレビです。しかし、ご存知の通り日本の視聴率は下降傾向にあり、この10年でテレビの前から約2000万人が消えたとも言われています。そもそも日本の人口自体が減少していることもありますが、テレビ視聴率の減少はスマートフォンの普及が大きな要因です。消費者の可処分時間がテレビからスマートフォンに移っているのです。以前は1,000GRP(※Gross Rating Pointの略で、出稿量と視聴率を基にしたテレビCMの定量指標。 延べ視聴率とも言う。)程度テレビでCMを配信すれば、国民の約70%にリーチすると言われていたのですが、今は若年層、ビジネスパーソンを中心にリーチが減少、またスマホを見ながらテレビを視聴する「ながら視聴」が増加しています。こうした背景から、ブランディングはテレビとスマートフォンを掛け合わせ、テレビでリーチしきれない層をスマートフォンで補完していくという考え方がスタンダードになりつつあります。

テレビを補完する、ブランディングに適したメディアとはどんなメディアだと思いますか?

広告主はユーザーに動画を長く見てもらえる枠を求めています。なので、私どもがプロモーションをお手伝いさせていただく場合、ブランディングを目的とした広告出稿は完視聴率(※再生された動画が最後まで視聴された割合)を重要指標として追います。そしてユーザーが動画広告を長く見てくれるのは、やはり「良質な記事」を掲載しているメディアなのです。「良質な記事」とは、ユーザーにとって有益な情報、例えば、一次情報を元にした記事や速報性の高い記事のことです。そうした質の高いコンテンツを生み出し、ユーザーからの信頼を勝ち得ているメディアは、完視聴率が高い傾向にあります。 また、ブランディング広告を配信する媒体選定の際に見るポイントは、コンテンツのカテゴリ分けが明確な作りになっているかどうかという点です。これは広告が配信されるのがブランドセーフな面かどうかを判断するためです。ブランディング広告においては事故や訃報の記事への掲載は避けなくてはならず、そうした記事が含まれないカテゴリのみに配信したいという広告主側の要望が強くあります。違法・不当な記事、公序良俗に反する記事も、言わずもがなですが同様です。こうしたブランドセーフティーの観点から、そうした記事を掲載しないメディア、掲載するとしても、ある特定のカテゴリのみに限られているメディアであれば、その面以外に広告を配信することができるので、ブランディングには適していると判断できます。

さらにブランディング広告は、ただ単にユーザーに見られれば良い訳ではありません。広告に接触するタイミングや場所は、ブランディングに大きく影響すると思いませんか?少し広告主目線でたとえ話をします。例えば、CHANELやGUCCIなどのハイブランドは、荒野の中にポツンと立っている看板に広告は出しませんよね。たとえその看板脇の道路が、お金持ちばかりが通る道だったとしても、出さないと思います。重要なのは広告を置く背景に価値があるかどうかです。逆に価値があるのはどこかというと、日本で言えば銀座4丁目だとか、青山や表参道といった誰しもが高級だというイメージを持っている場所です。私たちはWeb上の一等地を探し、そこに広告枠を設けています。