第2世代の新しい点は?
iliの第1世代と第2世代を比べて、見た目で違いを感じるのは難しいが、ユーザーからのフィードバックを経て細かな改善が行われている。改善点をまとめると次のようになる。
- 操作ボタンを両側面1個ずつから、片側面2個に変更
- 対応言語を1つから3つに増加
- バッテリー駆動時間を8時間から3日間へ延長
- 起動時間を2.5秒から1秒へ短縮
細かな変更点になるが、ボタンが両サイドから片サイドにまとめられたことで使いやすくなっている。ボタンが全部で3個しかないものの、それでも右ボタンと左ボタンがどの機能だったかわからなくなる。これが不思議なことに片側にあると、どれが電源ボタンでどれが確認ボタンか忘れない。
ちなみに、確認ボタンを押すと、自分の話した日本語がiliによってどのように認識されたのかを日本語で確認できる。相手がこちらの想定していない反応を見せた時は、確認ボタンを押して自分の日本語をiliが聞き取ってくれているかを確認すればよい。
発音のネイティブ感と技術的なポイント
iliの話す韓国語をネイティブの韓国人にチェックしてもらったのだが、かなり自然な音声になっているそうだ。類似のデバイスだと聞き取りにくかったり、何を言っているかネイティブですらよくわからなかったりすることがあるようだが、iliだとよく聞き取れると話していた。確かに、使っていて相手が聞き取れないといったことはなかったように思う。
インターネットに接続しない、つまりクラウドサービスを使わないでどうやって高度な翻訳を実現しているのか、気になるところだ。
日本語は子音と母音の組み合わせが少ないので、発音自体をマスターすることは他の言語と比べてそれほど難しくない。話し言葉は覚えやすいが、同音異義語というクリアしなければ課題がある。どの言葉を指しているのかを文脈から汲み取る必要がある。
iliはこの点を「旅行」という目的に特化することでクリアしている。旅行で利用するという前提で認識と翻訳をチューニングしているため、普通の翻訳機であれば膨大になるマッチングを抑えることに成功しているというわけだ。スタンドアロンで利用できる秘密はここにある。
では、iliを国際会議で使ったり、C-3POのかわりに使ったりすることができるのかと言えば、現状では難しい。不可能ではないかもしれないが、現実的とは言えない。残念ながらもうしばらくは、仕事で使う言語は勉強し続ける必要がある。しかし、インターネットに接続しない、つまりクラウドサービスを使わないで、ここまで翻訳可能なデバイスが手頃な価格で販売されている点は興味深い。
現在公開されている翻訳サービスはインターネット接続が必須だが、インターネットが利用できない状況は多々存在している。特に旅行ではそうしたケースが多く、iliはそこにフォーカスして開発されたデバイスなのだ。旅行で実用的に利用できる翻訳デバイスとして特異なポジションにある。
"万能翻訳機"とは言えないが、インターネットを必要とせずにここまでの機能を実現できているのは秀逸だろう。iliはこのたび日本でも個別に購入できるようになったうえ、Wi-Fiルータのレンタルと同時に申し込める場合もあるので、近々、韓国や中国に旅行に行かれる方は試してみてはいかがかだろうか。