知識を蓄積させていき、一人前のスタッフを目指す

店舗オープン時、あみこに投げかけられた質問は452件。そのうち回答有数は352件で、正答率としては77.8%だった。1カ月以上経過した現在では、どの程度の回答率なのか。

「現在も回答率はおよそ7割ほどですね」と、横山氏。数字的にはあまり変わっていないが、答えられる質問の数が増えていないというわけではなく「あみこが賢くなればなるほど、利用者が質問のバリエーションを増やしたり、難易度を高めたりするためだと考えられます」と、分析する。

確かに、1つの質問に答えてもらえると「じゃあこの質問には答えられるだろうか」「この質問ではどうか」と試してみたくなる。

「どのような人が訪れるか、どのような質問が投げかけられるかわからない中で、オープン当初から7割の回答率を維持できていることについては、高い精度を出せていると思います。この先も学習を繰り返し、いずれはどんな質問にも答えられるようにしたいですね」(横山氏)

日々学習を続けるあみこ。現在、どのレベルまでの質問であれば答えられるのだろうか。

「現状、各商品の正確な名前などはまだ覚えていません。ほしいアイテム名などを伝えても、フロアマップを表示してくれる程度です」と、岩永氏。「商品の在庫情報や入荷情報、詳細な陳列場所などの回答を充実させて、一人前のスタッフとして働けるようになってほしいですね」と、あみこの成長を望む。

アキバの看板娘から、世界の看板娘へ

すでに多くの質問に回答できるあみこだが、まだまだ勉強することは多そうだ。彼女はこの先、どのようなキャリアを描いていくのだろうか。

「今は日本語と英語だけですが、訪日客、とりわけアジア圏のお客様が多いこともあり、中国語や韓国語も話せるようになってほしいですね。そして、雑談力を磨き、知識を蓄えて、将来的にはECサイトのチャット対応システムとして適用したいと考えています。実は、元々店舗のAI接客システムを導入するつもりではなく、あみあみのECサイトにおいて問い合わせ用のチャットシステムとして導入しようと考えていました。KIZUNAのお話を伺っているうちに、実店舗に導入したらおもしろいのではないかと思うようになり、先にこちらに導入することになったのです」(岩永氏)

ECサイト上では購入者に対して注意事項をしっかりと伝達できないことや、越境ECであるため時差によって人の手では問い合わせに対応できないケースがあるという。そのため、サイト上で24時間顧客対応を実施できるAIの導入が求められる。あみこがWebを通じてグローバルで活躍する日もそう遠くないのかもしれない。

横山氏は「あみこに愛着を感じてくださっている社員の方も多いので、もっといろいろなところで使ってもらいたいなと考えています。店頭だけでなくオフィスにおける社内ナレッジ共有などでも活躍できるはずです」と、あみこの可能性を示唆する。

オフィスでほかの社員が忙しそうに働いていると、仕事上の不明点を聞けないことも多い。また、社内の問い合わせ対応に奔走させられて、業務が停滞してしまう部署の人もいるだろう。「なにかあればあみこに聞こう」という雰囲気を醸成できれば、社内の事務作業を円滑にすることができるというわけだ。

あみこの将来について語り合う両社の担当者

あみこは現在16才。おそらく来年も16才のままだろうが、日々知識を蓄えて、賢くなっていくことは間違いない。コミュニケーションの幅が広がっていけば、買い物が便利になるだけでなく、買い物の合間に友人と話すような感覚で雑談を楽しめるようになるだろう。この先どこまでナチュラルな会話ができるようになるのか、彼女の成長が楽しみだ。

また、ECサイトや社内ナレッジの共有など、あみこはさまざまな分野で活躍できるポテンシャルを秘めている。店舗での接客経験を糧に、さらなる敏腕AIへとステップアップを目指してほしい。