アウトプットの増加はマネージャーにかかっている!?

アウトプットの増加、つまり、業績向上に向けては、社員およびマネージャーの能力向上が不可欠であり、適材適所を実現し、退職者を減らすことが重要となる。

これらの達成に向け、まず、マネージャーがチームの可能性をフルに引き出すために、「マネージャー180」という仕組みが導入された。これは、チームの成果を最大化するために必要な10分野50項目について、マネージャーの行動を定期的に調査することで、自身の強みや改善点を認識し、上司・人事からの支援を受けたり、研修を受講したりしながら、日々実践するというサイクルを6カ月ごとに実施するもの。

ちなみに、マネージャーの評価は部下が行い、その結果はマネージャーの上司、さらには社長も見ることが可能だ。マネージャーの行動はその上司の責任だからだという。

部下から評価を受け、その評価を上司が閲覧するというのは、ちょっとしたプレッシャーかもしれないが、裏を返せば、それだけマネージャーは期待されているということになる。

「マネージャー180」は今年1月に導入されたということで、7月から2回目が始まる。

なお、同社はマネージャーに大きな仕事を任せるだけではない。マネージャーをサポートする仕組みとして、グローバルで、コーチング、リーダーシップ、戦略策定といった豊富なeラーニングやビデオを提供しており、自身に適した研修を検索し、すぐ受講できるようになっている。

テレワークの十分な活用にはコツあり

一方、ムダを削減する施策の1つが「ITツール」の活用だ。採用から入社オンボード、能力開発、業績管理、評価、表彰、異動・昇格まで、さまざまな人事のニーズに応じた仕組みが、ITにより提供されている。この仕組みが評価されて、昨年10月には「第1回HRテクノロジー大賞」の大賞を受賞している。

もう1つの施策が「テレワークの活用促進」だ。同社では、優秀なエンジニアが育児で休業することになったことを契機に、2002年からトライアルで在宅勤務制度が始まり、それが成功したことで、2004年から全社で展開されている。

同社の全社員2500人にアンケートをとったところ、8割がテレワークを利用した経験があるという。さまざまな企業がテレワークの利用状況を公開しているが、これはかなり高い数字と言える。

「テレワークを開始したけど、あまり活用されない」という話もよく聞く。オラクルでは、なぜテレワークの活用がうまくいっているのだろうか。

赤津氏は「テレワークを成功させるにはコツがあります」と語る。

「職種や人によって、テレワークには向き不向きがあるので、一律にやるのではなく、個別の状況を見て判断することが重要です。成果を担保することは必要条件なので、それが揺らぐのであれば、テレワークを許可しないという判断もありえます。一般的には、集中して行うことで効果が上がる業務を切り出して、週に1、2回程度利用するのが、効果的なようです」(赤津氏)

また、赤津氏によると、業務時間の有効活用度を調査したところ、移動時間が予想以上に多かったという。そこで、パートナー企業との会議のうち、定例会など、資料を事前に配布して電話会議で同様の効果が得られるものは、遠隔会議システムを利用し、移動の時間を減らしたそうだ。

「テレワークというと、在宅勤務に注目が集まりがちですが、リモートワークという観点に広げると、もっと活用できる場面が増えると思います」と、赤津氏は話す。

今、国を挙げて「働き方改革」に取り組んでいるが、働き方を改革することで、企業としての将来性までを見据えている企業は少ないのではないだろうか。

長時間残業など、労働環境の改善はもちろん重要だが、働き方を変えることで、企業として成長できるなら、それに越したことはない。

働き方を改革しなければならないが、何から手を付けたらよいかわからない――そんな企業にとって、日本オラクルのやり方は参考になるのではないだろうか。