また、重要なのが意識改革だ。これは、先に述べたできる仕事とできない仕事という意識の部分でもある。さらに上司から部下への評価や、同僚との働き方といった部分も意識改革が必要になる。

たとえば、労長時間働いていることが良いことだという意識や、目の前で頑張っている姿が見えないと、しっかり働いているように見えないという考えはテレワークには合わない。この考え方があるとうまく評価ができないだけでなく、テレワークを行う側も正当な評価をされないのではという不安から、隠れ長時間労働をしてしまったり、制度があっても使えないといったことになりがちだ。

「生産性を見るというと成果主義と思われるかもしれませんが、そうではありません。時間あたりの生産性が高い人が良い社員であるという意識改革と、それに合わせた評価制度の刷新が必要です。社内でどんな人の生産性が一番高いと思いますか? 保育園へのお迎え直前のお母さんです。時間的な制約のある人の方が生産性が高いのです」(田澤氏)

今後は「成果」+「時間」ではなく、「成果」/時間」による時間あたりの生産性で評価する必要があると田澤氏は説明した(出典:テレワークマネジメント)

労働時間が減ったことで評価や給与が下がるのならば、誰も時間内に仕事を終わらせようとはしない。定時退社することが高評価につながり、残業すれば評価が下がるというシステムなら、働き方も変わってくるだろう。

「一部の企業では残業代よりも高いノー残業手当を出す、残業が減ったことによって削減された人件費をボーナスとして還元するなどの取り組みが行われています。これは過渡期対応でしょうが、こういった取り組みで意識を改革して行く方法もあるのです」と田澤氏は語った。

オフィスと同じ環境とテレワーカーにも提供

最近一部の先行企業で、テレワークや在宅勤務を廃止するような動きも出てきている。多くの場合、導入以前よりも生産性が下がったことを理由としているようだ。しかし田澤氏は、なぜ生産性が低くなったのかに着目すべきだという。

「緊張感がないからサボってしまう、監視されていなければなまけてしまうという人もいるでしょう。それが心配で部下にはテレワークをさせたくないという上司もいるはずです。しかし、それはコミュニケーションの仕組みで解決できます」(田澤氏)

在宅でもサテライトオフィスにいても、本社オフィスにいるのと同じ環境をつくれば良いという田澤氏は、自身の経営するテレワークマネジメントおよびワイズスタッフで、それを実現するバーチャルオフィスを構築している。

仕事を始める時、社員がログイン処理をすると画面上のバーチャルオフィスに着席状況が表示される。あらかじめ割り振られた自席以外に会議室や集中スペースが用意されており、自由に移動可能だ。リアルなオフィスとして東京オフィス以外の2拠点を含めた3拠点はカメラで接続され、働いている様子が見える。一方で、バーチャルオフィス内は会話する声が聞こえる会議室やワークスペースと、音を遮断できる集中スペースがある。そして、在宅スタッフを含めて、必要があればPCのカメラを使って即座にテレビ会議が行えるという仕組みだ。

テレワークマネジメントが提供する仮想オフィスコミュニケーションツール「Sococo」(出典:テレワークマネジメント)

「03で始まる名刺の番号にお電話をいただいた時、実は電話に出ているのは北海道のスタッフです。私自身、東京に週の半分、残りは地方で仕事をすることが多いのですが、これで問題ありません」と語る田澤氏は、「在宅でやらせると生産性が下がると感じるかもしれませんが、出勤ができないから退職するというのでは生産性はゼロです」と、工夫して人材を確保し、生産性を向上させることの大切さを説いた。

テレワークマネジメントでは「Sococo」を活用

また、こうした仕組みによって特に自律できる人だけを選んでテレワークを認めるというやり方ではなく、全社員が利用できるようにすることも大切になるだろう。

「一部の人にしか認めない、オフィスに残った人に電話取り次ぎや雑用が集中するという不公平感はテレワークの普及を妨げます。オフィスでもテレワークでも同じように働ける、特にできる人だけが認められるのではなく、誰でもできる、ダメな人がいるとしたらダメな人でもできるような仕組みを作るのが大事です」(田澤氏)