電子機器デザインサービスのゼネコンを目指す
ちなみに同社、ザイリンクスのみならず、Texas Instruments(TI。日本法人は日本テキサス・インスツルメンツ)のパートナーでもあり、TIのDSPを使った画像処理なども長年にわたって開発をしてきているとのことで、幅広い分野で技術の研鑽に務めてきたという。同氏は、「さまざまな技術を活用し、映像・画像機器、医療機器、電子顕微鏡、FA機器、防犯カメラ、サーモグラフィなど多くのモノの開発をさせていただいてきた。それらの中には開発に苦労するものも多くあったが、苦労するからやらない、のではなく、そこは勉強代として、技術ノウハウを習得させてもらっているという思いでやってきた」とさまざまな技術が高いレベルに至った背景を説明するが、そうした受託開発のすそ野が拡大していく流れのなかで、例えば自動車業界には自動車業界の、医療機器業界には医療機器業界の規制や文化が存在し、クライアントから、それはこの業界では常識、といわれても、初めて請け負う業界の知識が不足しているため、そうした文化などを理解しきれなかったり、という機会が増えてきていることを感じるようになってきたという。こうした思いは、同社のみならず、受託開発の多くの企業が感じることであろうということで、「我々は日本のメーカーなので、すり合わせ型のやり方が多かった。いわゆる、やりながら変えて行きましょう、という文化が強かった。一方で、欧米企業の強さというのは、仕様を固めてから外に出すという点にある。我々は、このやり方の違いを逆手にとって、日本のクライアントに向けて、我々が責任を持って、製品化に向けたトランスファをします、という新たなものづくりの考え方を提案しようとしている。いわば、組み合わせ型(すり合わせ型)の開発ではなく、クライアントからすべてを請け負って、協力会社を束ねて、彼らをコントロールする電子機器デザインサービスのGeneral Contractor(ゼネコン)を目指そうという考えだ。要件定義をしっかりとまとめ、クライアントが何を言っているのか、理解できる存在になり、パートナーと連携し、目標とするものがきっちりと作られていることを保証する。これが、これからの日本の受託開発で必要になってくる姿であり、我々がその先行者となる」と、新たなビジネスモデルを掲げ、これからIoT時代の本格到来で変化していくであろう、ものづくり環境の変化に対応を図ろうという意気込みを見せる。
OIDSが有する主な技術と、これまで開発してきた製品例。製品としては、そのすべてではなく、コンポーネントの一部を担当することが多いが、中には最終装置まで手がけたものあり、その設計開発の幅は非常に広いといえる (資料提供:OIDS) |
2014年に設立された同社だが、設立の際に、企業ビジョンとして、「No1への挑戦」という言葉を掲げたという。なにをもってNo1とするのか、という点について同氏は、「自分たちがNo1と思うことをやろうと言っている。特に、これまで経験を積ませていただいてきた情報通信、医療電子機器、自動運転支援の各分野でのNo1の称号を掴み取ろうと社内には言っている」と述べており、中でも自動運転を含む自動車関連は最注力分野だとする。すでにクロアチアのFPGAデザインサービス企業で、ザイリンクスのプレミアメンバーでもあるXylonと提携。同社の日本でも窓口の役割を担いつつ、自動車分野でのFPGA活用に挑んでいる。「ようやく試しに開発キットや評価ボードを購入してもらったクライアントから、こうしたことがやりたい、という話がくるようになってきたが、どういった段階からであっても、受託していただければ、我々としては対応できる準備はすでに整えている」とのことで、徐々にではあるが、自動車分野への参入を果たしつつあるようだ。ちなみに、2017年1月に開催された「オートモーティブワールド2017」のザイリンクスブースにて、4つのカメラで撮影した画像をZynqでリアルタイム処理し、視点も自由自在に変化させることを可能とした「3Dアラウンドビューモニタ」のデモは、Xylonの技術をベースに、OIDSがサポートを行う形で関与したものであったという。
上段および下段の画像はオートモーティブワールド2017のザイリンクスブースでの3Dアラウンドビューモニタのデモの様子。リアルタイムで周辺映像を取得し、レイトレースなどを加えつつ、視点を自由に変えることができる。下段の右の画像は、最近、サラウンドビュー機能に加えて、搭載したい機能として上がってきているものの例 (右下の資料提供:OIDS) |
「FPGAを使ってディープラーニングを行う、という話もでてきており、対応を進めていく必要がある。そうした先端技術を追いかけて行くにはやはり人の存在が重要であり、そうした人こそが、OIDSそのものと言える」というように穴田氏は、幾度も人の重要性を強調していた。人を中心に据えることで、技術の進歩、そして環境の変化への対応を図り、電子機器デザインサービスのゼネコンへと進化を図ろうとする同社。IoT/ビッグデータ/AIといったキーワードのもと、ものづくり産業にも変革が訪れつつあり、モノを作るプレーヤーの様相も変わろうとしている現在、モノの価値を決めることにつながる設計という最前線に立ち、さまざまな最先端の技術をフルに使いこなす同社の存在は、決して目立ちはしないが、これからの日本のものづくり産業の縁の下の力持ちとして、その存在感を増していくことであろう。