エムティーアイが電子帳簿保存法への対応を含めたe文書への本格的な取り組みのために導入したのが、PFUの提供する紙文書最適化ソリューション「OnBase」だ。
「社内すべての電子保存化には取り組めないので、まずはお金の流れについて一連の社内手続きをシームレスに閲覧できることを念頭に、請求書や領収書の電子保存に着手しました」と語るのは、エムティーアイ 経理部の岸武氏だ。
「受領者が領収書や請求書を電子化するためには、3日以内のタイムスタンプ付与が必要になるという要件があり、導入ハードルが高いため、今回は見送っています」と岸氏は語った。書類の電子化は経理部で集中的に行っている。そして、その電子化されたドキュメントは必要に応じて検索・表示するという手法ではなく、業務システムの中で自然に閲覧可能な形を目指してシステムが構築された。
「会計システム上で伝票番号をダブルクリックすると請求書や支払依頼書が開き、さらにドキュメントをダブルクリックすれば契約書や注文書が見られるという形です。コンテンツの中から直接関連するものが見られるという方法をOnBaseのオプション機能で実現しています。これができるというのが、OnBaseを選択した理由の1つでもあります」と岸氏は語る。
導入にあたっては、発注から本番稼働まで約6カ月かかっている。この中には、税務署への申請および審査期間も含まれているが、大きな問題はなく完了できたという。
「審査期間が3カ月あるので、その間に詳細を詰めたり手順書などを整理しながら1月の本番稼働を迎えました。昨年の12月初旬に国税局のヒアリングが急遽決まったのですが、当時は審査期間に訪問があるということは聞いていなかったので、いくつか準備を前倒ししなければいけなくなりましたし、ヒアリングの際にスキャンする人と結果確認する人を明確に分けないといけないという指導を受け、本番稼働直前にも関わらずフローを変更することが必要になりました。また、社内的には経費精算の提出期限短縮などについて理解を得る必要はありました」と岸氏。電子帳簿保存法に取り組む企業がまだ少ない状況だけに、手探りになった部分も多かったようだ。
また、社内システムのカスタマイズや新規ツールの開発なども行われた。既存システムから出力される伝票番号が一部小さすぎてOCRに不向きだったことから、改修を行って番号を拡大表示するようにしたという。また、国税局から指摘を受けたスキャンと確認の対応者の分離についても、対応ツールが新たに開発された。
さらに、特殊な承認フォームで一括承認した伝票を、一度のスキャンですべてを伝票番号ごとに登録できるようにするなど工夫もされた。
コスト面以外のメリットに注目、今後も横展開を推進予定
「紙文書を使わない利便性として、監査等への対応工数の削減のみならず、場所を選ばない働き方の実現があります。そして、紙文書を保管するスペースが不要になるので、その場所をミーティングスペースや集中スペースに転用するなど、オフィススペースの有効活用へつなげることが可能です。さらに紛失リスクの低減、適切なアクセス権の付与が可能といったメリットもあります」と岸氏は語った。
もちろん、デメリットもある。たとえば、紙文書がデータ化されたことによって検索や共有が簡便になり、問い合わせや税務調査等への対応時間が1/10になったとしよう。時間的には大きな削減になり、コスト削減にもつながるはずだ。しかし一方で、書類をスキャンしてタイムスタンプを付与するという作業は新たに発生しており、当然そのための時間もかかる。そういったメリットとデメリットをはかりにかけ、総合的にメリットの方が大きいとエムティーアイでは判断したという。
「弊社の場合、紙書類を保管するために外部倉庫を借りており、こちらのコストが年間36万円ほどかかっていました。今後保管が不要になるとはいっても、いきなり全部がなくなるわけではありませんし、システムの導入・保守費用と比較すると倉庫代の方が安くなります。それでも、業務工数削減、業務効率化の実現、セキュリティの向上といったメリットの方が多くあります」と岸氏は語った。
システム導入後の検証でも、保管費用やスペースの削減、フレキシブルな閲覧、紛失リスクの低減やセキュリティ向上といったメリットは十分享受できているという。
「検索・共有工数の削減については、まだ手続き一連の流れが閲覧できる状態にはなっていないので、今後の対応が済めば当初の見込みが達成できると考えています」と岸氏。
現状では会計システムから請求書等は見られても、契約書等までをスムーズに見られる形になっていないため、より強化を行って行く予定だという。
今後の展開としては、AIやRPAの活用を積極的に進める予定だ。
「現在、AIとOCRを活用した領収書読み取りアプリの開発をグループ会社で行っています。ベータ版ができて内容を確認している段階で、従業員への提供も春にはできる予定です」と岸氏。さらにe文書対応の横展開もより進めて行く予定だ。