もちろん、電子帳簿保存法への対応も積極的に行っている。新制度での申請が可能になった2016年9月には申請書のダウンロード配布なども始めたが、当時即座に問い合わせも受けるなど、ユーザーの中には積極的に取り組む企業があることも把握しているという。
「税務署への申請から実際の許可がおりるまで3カ月程度かかることや、経費発生から3日以内のスキャンなどハードルが高いですし、タイムスタンプ自体も経費がかかりますから、中小企業にとっては取り組みづらいものでしょう。しかし、後戻りするタイプの法律ではありませんから、今後、徐々に規制緩和がされて普及していくと考えています」と内山氏。そうした将来に向けて、まずは電子化をしておくのがオススメだということだ。
弥生では電子化サポートの一環として、ユーザーはタイムスタンプ機能を無料で利用可能にしている。中小企業向けの特例をあわせて利用すれば、実は中小企業の方が電子帳簿化はやりやすいかもしれないとも指摘する。
「本来はスキャンする人、スキャン結果を確認する人、定期検査を行う税理士という3人が必要ですが、概ね20名以下の小規模ビジネスの場合は、スキャン結果を確認する人というのを省くことができます。経理が1人で対応しているような規模の方が、集めたものを定期的にスキャンし、タイムスタンプを付与して電子帳簿化するのはそれほどハードルは高くないでしょう。問題は申請の方です」と内山氏は語った。
スマートフォンによるスキャンについては、やはり3日(3日以内にタイムスタンプを付与)という制限があまりにも厳しいとしながらも、やはり少人数の方がまだ導入は現実的だろうと語った。
電子帳簿化による大きな業務効率化メリットなどはないながらも、現実に取り組めるということでスモールビジネスの場から電子帳簿化が進む可能性もありそうだ。
順次法改正に対応しつつユーザーの後押しを実施
これまで電子帳簿保存法改正などにあわせてセミナーを開催してきた弥生だが、税理士を対象にしたセミナー等の結果から、企業だけではなく税理士側にも二の足を踏むような意識が見えるという。
「今のところルール通りの運用が難しいという現実的な側面の他に、税務調査や裁判の時に十分な証拠能力を持っているのかといった不安もあるようです。また検索性が高くなることで、何かあったときに調べるのに時間をもらいたいというようなことが言いづらくなりそうだという問題も感じられています」と内山氏。
紹介コンテンツの充実、申請の支援、各種セミナーといった形での後押しに加えて、弥生では常に法改正にあわせたプログラム修正も行っている。当然、今後もシステム面での対応を進めて行く予定だ。
「これまでの修正でいえば、2016年のものより2015年の改正の方が大きな修正が必要となりました。今後も必要に応じた修正をして行きます。今の流れだと、3日や1カ月+1週間といった期限の部分が緩和されるのではないかと予想しています。個人でも電子化にとりくめるようにして行くのではないでしょうか」と語るのは、弥生 マーケティング本部 マーケティング部 マーケティングコミュニケーションチーム 担当マネジャーの塩崎智史氏だ。
「たとえば2カ月か3カ月くらいテストをしてみて、やれそうだと判断してから申請するという動きをお勧めしたいですね。まずは領収書の電子化。それができるようなら期限が守れるかどうかテスト。そして、実際の申請という感じで動けば、無理なく準備ができると思います」と内山氏。
今から準備をはじめ、夏には申請を行えば来年からの電子帳簿化も行える。また個人事業主も今年から領収書電子化を行えば、1年後の確定申告時期に慌てる必要も減るだろう。弥生はスムーズな会計処理を推進するための機能を今後も提供して行く予定だ。