8月: 「ドラゴン2」宇宙船、無人での初飛行
スペースXが開発中の有人宇宙船「ドラゴン2」が、無人での初飛行を行う。
ドラゴン2は、現在国際宇宙ステーションとの物資の往復に使われている「ドラゴン」補給船をもとに開発された有人宇宙船で、最大の特長はパラシュートを使わず、側面に装着した少し大きめのスラスターを逆噴射しながら、陸地の狙った場所に正確に着陸することができることにある(緊急用のパラシュートは装備する)。またこのスラスターは、打ち上げ時の脱出ロケットとしての機能も兼ねている。
ドラゴン2は2014年にお披露目され、2015年には発射台から脱出する試験を、2016年にはスラスターを噴射しながら空中で静止する試験にも成功している。
この打ち上げでは、無人のドラゴン2を国際宇宙ステーションのハーモニー・モジュールにドッキングさせ、さらに帰還させる。試験が成功すれば、2018年にも有人での打ち上げが始まる予定となっている。
またこれよりも以前に、飛行中のロケットから脱出する試験も行われる予定とされているが、詳細は不明。
9月15日: 土星探査機「カッシーニ」、土星に突入しミッション終了
「カッシーニ」は1997年に打ち上げられた、米国航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)の探査機で、2004年に土星に到着した。
現在も探査機は正常で、観測が続いているが、スラスターの燃料がなくなりつつあることなどから、いよいよ土星に落とし、処分する作業が行われることになった。この運用は「グランド・フィナーレ」と呼ばれ、4月22日から徐々に軌道の高度を落とし、土星の輪っかを何度も通りながら、土星本体に近付き、やがて木星のガスに突入する。
土星に落とすのは、土星の衛星タイタンやエンケラドゥスなどには生命が存在する可能性があり、万が一落下して汚染しないようにとの配慮である。
10月か11月: 金井宇宙飛行士、ソユーズ宇宙船で宇宙へ
JAXAの金井宣茂(かない・のりしげ)宇宙飛行士が、国際宇宙ステーション(ISS)の第54/55次長期滞在搭乗員として、ソユーズMS-07宇宙船に乗って宇宙へ旅立つ。
金井飛行士は1976年に生まれ、2002年に海上自衛隊に入隊し、医師の資格を有する幹部自衛官(医官)を務めた。その後、2009年にJAXAの宇宙飛行士候補生として選ばれ、訓練を重ね、2011年にISS搭乗資格をもつ宇宙飛行士として認定。そして2015年にISSの第54/55次長期滞在搭乗員に選ばれた。
ISSでの滞在期間は半年ほどの見込みで、ちょうど来年の今ごろ、金井飛行士は宇宙で生活しているはずである。
(金井宇宙飛行士のミッションの詳細は、『「私、"もぐり"の宇宙飛行士なんです」 - 金井宇宙飛行士、2017年に国際宇宙ステーションへ出発』をご参照ください)
12月: 国際宇宙ステーションの「ピアース」モジュールを分離、廃棄
国際宇宙ステーション(ISS)のドッキング・モジュールのひとつ「ピアース」(ピールス)が、ISSから分離され、廃棄される。
ピアースは2001年、プログレス補給船の先端に取り付けられる形で打ち上げられ、ズヴィズダー・モジュールに結合された。以来、有人のソユーズ宇宙船や無人のプログレス補給船のドッキング場所として使われている。
しかし、設計寿命の5年を大きく超えていることや、また2018年ごろの打ち上げが予定されているロシアの新しいモジュール「ナウーカ」が同じ場所に結合されることから、2017年をもって分離され、廃棄されることになった。
プログレスMS-06補給船を使って取り外し、そのまま軌道を離脱して大気圏に落として処分する。
12月28日: インドの「PSLV」ロケット、グーグル・ルナ・Xプライズの探査機を打ち上げ
民間による月到達競争の「グーグル・ルナー・Xプライズ」に参戦しているインドのチーム「チーム・インダス」と、日本の「HAKUTO」の探査機が、インドのロケット「PSLV」で月へ向けて打ち上げられる。
グーグル・ルナー・Xプライズは、Xプライズ財団が主催しているコンテストのひとつで、民間が開発した無人の月探査機を月に着陸させ、探査車を走行させたり、動画を撮影したり、アポロ計画の遺構を撮影するなどすれば賞金が出るというもの。世界中から数十ものチームが参戦しており、現在は5チームが有力候補として残っている。
チーム・インダス、HAKUTO以外のチームも、それぞれ米国などのロケットで2017年中に打ち上げを計画しており、どのチームが一番乗りするのか、どのような成果が得られるのかが注目される。
12月?: 約40年ぶりの月サンプル・リターン計画「嫦娥五号」打ち上げ
2013年に打ち上げられ、大きな成果を残した「嫦娥三号」に続き、中国は今年、月から石や砂といったサンプルを持ち帰ることを目的とした探査機「嫦娥五号」を打ち上げる。
嫦娥五号は8トンほどもある大型の探査機で、アポロ計画の宇宙船のように、着陸船や帰還船、月の周回軌道に乗ったり月から帰還したりするためのエンジン部分などが分かれた構造をしており、ランデヴーやドッキングを繰り返す複雑な運用を行う。持ち帰るサンプルの量は2kgほどになるという。
すでに2014年には、月からの帰還技術を実証する試験機の運用に成功しており、さらに2016年には嫦娥五号を打ち上げられる大型ロケット「長征五号」の初打ち上げにも成功するなど、実現に向けて着実に準備が進められている。
ちなみに月からのサンプル・リターンは、1976年に行われたソヴィエト連邦の「ルナー24」がこれまでのところ最後となっており、成功すれば実に約40年ぶりの出来事となる。
未定: 小型ロケット「エレクトロン」、初打ち上げ
近年、世界各国で小型衛星打ち上げ専用の小型ロケットの開発が盛んになっているが、そのなかで現在最も開発が進んでいる、ニュー・ジーランドに本拠地を置くロケット・ラボが開発した「エレクトロン」ロケットの打ち上げが迫っている。
エレクトロンは全長17mで、太陽同期軌道に150~225kgほどの打ち上げ能力をもつ。機体の全体に炭素繊維複合材料を使った先進的な設計をしており、また世界で初めて電動ポンプ式のロケット・エンジンを採用している。
すでに2016年末にはエンジンや機体の開発が終わり、発射場も完成。早ければ今年前半にも打ち上げられるという。
未定: 小型ロケット「ローンチャーワン」、「ネプチューン」などの初打ち上げ
小型ロケットはエレクトロンだけでなく、世界中で開発が行われている。
たとえばサブオービタルでの宇宙旅行の実現に向けた宇宙船「スペースシップツー」を開発しているヴァージン・ギャラクティックでは、その派生型のひとつとして空中から発射する小型ロケット「ローンチャーワン」の開発を行っている。
また詳しい開発状況は不明なものの、米国では低性能で低コストなロケットを多数束ねることで衛星打ち上げを行うというコンセプトで、インターオービタル・システムズという会社が「ネプチューン」を開発している。
いずれも2017年中に初打ち上げを行うとされ、とくにネプチューンはグーグル・ルナー・Xプライズのチームのひとつの探査機を打ち上げるともされているが、詳しい予定などは現時点では不明。
未定: インターステラテクノロジズ、観測ロケット「モモ」を宇宙へ打ち上げ
小型ロケットに挑戦しているのは海外だけでない。北海道を拠点にロケットの開発を行っているインターステラテクノロジズも、今年観測ロケット「モモ」を、宇宙空間へ向けて打ち上げることを計画している。
前述したエレクトロンなどとは違い、モモは人工衛星を打ち上げられる能力はなく、宇宙空間に達した後そのまま落下する弾道ロケットである。しかし、同社では並行して人工衛星を打ち上げられる能力をもったロケットの開発も行っており、モモの成功でその開発にはずみが付くことが期待される。
(昨年秋ごろまでの同社の歩みについては、『2016年国際航空宇宙展 - 日本発のロケット会社インターステラ、今年打ち上げ予定のロケットなど展示』をご参照ください)
【参考】
・Launch Schedule - Spaceflight Now
http://spaceflightnow.com/launch-schedule/
・Space exploration in 2017
http://www.russianspaceweb.com/2017.html
・Orbital Launches of 2017 - Gunter's Space Page
http://space.skyrocket.de/doc_chr/lau2017.htm
・ESA activities in 2017 of interest to media / Press Releases / For Media / ESA
http://www.esa.int/For_Media/Press_Releases/ESA_activities_in_2017_of_interest_to_media