モジュールの内部構成はこんな感じ(Photo09)になっている。UBX-R3001とUBX-R0010が今回同社が開発したチップで、このほかにパワーアンプとフィルターなどが外付け(ただしモジュール内)に搭載される形だ。特徴的なのは、モデムのレイヤ1やIPサブシステム、LTEのプロトコルスタック、モデムAPIなどもやはり同社が提供すること。これだけではなく、例えば同社が提供する「AssistNow」と呼ばれる測位アシストサービスに近いものは、すでに携帯電話キャリアも提供しているが、問題はそのサービスを利用できるのはそのキャリアを利用しているユーザーに限られることだ。なので例えば国内だとNTTドコモ、au、SOFTBANKでそれぞれ別対応を行わなければならない。ところが同社の提供する技術はキャリア依存ではないので、このあたりも組込機器の開発に際しては柔軟性が高まるとしている。
Photo10・11がそのLARA-R3シリーズの主要な特徴と仕様である。面白いのはGNSSはGPSとQZSS L1 C/Aのみを考えていることで、中国の北斗や欧州のGalileo、ロシアのGLONASSには未対応な一方、みちびきは利用できる形だ。このあたりは、本国の日本市場への重視の表れだ、としている。またI/FとしてはI2Sが何故か出ている(サポートは将来リリースのファームウェア予定)だが、これは通話用というよりは、例えば監視カメラなどで同時に音声も拾いたいといったケースでのために用意しているという話であった。チップとしてVoLTEに対応しているという訳ではないそうだ。
Photo10:同社は今年9月にcm精度のGNSSチップの開発を発表しているが、今回搭載されたのはそこまでの精度は無い。とはいえ、2m程度の誤差であるとしている |
Photo11:アンテナパッドは2本としているが、これはCat 1の送受信用で、これとは別にGNSS用のアンテナパッドが1本あるとの事 |
さて、発表の骨子はこんなところだが、若干補足を。まず今回の製品だが、IoT向けとは言え、シングルモード(つまりLTE Cat 1のみ対応で、2G/3Gは未対応)という思い切った構成である。これに関しては、すでに国内でもキャリアのLTEのカバレッジは3Gとほぼ同等であり、製品が投入される時期にはもう2G/3Gのサポートは不要だろう、と割り切った形だ。むしろ2G/3Gを切り捨てることで、これらを利用する際に必要な特許料の支払いや、当然ながら2G/3Gの回路を追加することによるダイエリア増加や外部部品追加などによる製品コストの上昇を抑えるほうが重要だと判断したそうだ。
ちなみに現時点ではまだチップそのものは存在していない。チップや、これを搭載したモジュールの登場は来年後半になる予定で、そこからFCCや日本では技適などの認証取得と、その後にキャリアによる認証作業などが行われる事になる予定だそうだ。当然ながら、現時点では(すでに話し合いは始めているとは思うが)キャリアのサポートプランとか、IoT向けのビジネスプランなどで決まったものは現状無い。恐らくはヨーロッパでまずそうした作業に取り組み、続いて日本あるいはアメリカといった国でもそうした取り組みが始まることになる模様だ。
そんな訳で現状まだチップも何も無いところからのスタートではあるが、一応サンプル価格は70ドル前後を想定しており、1万個ロットで32~33ドルあたりになる模様だ。このあたりは同社が直接販売するのではなく、代理店経由での販売になるので、正確なところはまだ決まっていないらしい。そんなわけで搭載製品がでてくるのは2018年以降ということになると思われるが、その頃にはキャリアによる通信プランなども用意されてくるのではないかと思われる。