続いて登壇したベルシステム24 マーケティング本部 コンサルティング部 部長 北岡豪史氏は「コンタクトセンターナレッジの構築と人工知能がもたらすインパクト」と題した講演を行った。

ベルシステム24 マーケティング本部 コンサルティング部 部長 北岡豪史氏

「AIは魔法の杖ではありません。革新的な技術であるのは確かですが、コンタクトセンターの運用は今の状況で運用を続けて行かなくてはならず、いきなり準備なしにAIを導入することはできません」と講演冒指摘した北岡氏は、コンタクトセンターにおけるAI活用の準備について語った。

同氏はAI活用にはナレッジが必要であるとした上で、その活用度合いをモデル化して点数をつけられるものとして、ナレッジ成熟モデルを紹介。

「コンタクトセンターのコンテンツを中心に据えた時、ナレッジ基盤、ナレッジ型運用、ナレッジチーム、KPIの4つの視点が非常に重要であり、この最適化を1つの考え方の中心に据えて行きたい」と北岡氏は語り、各要素の解説を行った。

ナレッジ活用成熟モデル

コンテンツには、FAQやマニュアル、製品情報、対応履歴といったものに個人の暗黙知なども加わる。紙媒体やデータ化されているものだけでなく、分析することによって新たにデータ化されるものなどすべてを対象にナレッジを考える必要があるという。

コンタクトセンターにおけるコンテンツ

ナレッジ基盤には、そういった各種データが整理統合して格納されることになるが、紙資料のデータ化や個人の暗黙知の棚卸しなど、AIがアクセスできる形で整理していかなければならない。非常に多くの情報を扱うことになるため、何から手をつけるかは業務の難易度や業務量によってナレッジを分類し、戦略やニーズに基づいた優先度づけが必要になるだろう。さらに業務特性に合わせてどのような型で今鉄を構築するのかを決定した上で、ナレッジの集約、分解・分類を行い、タグや関連リンクといった検索のための情報を付与する。

コンテンツを格納するナレッジ基盤

業務特性に合わせて型を決定

格納前に分解・分類と検索性を高める情報付与が必要

「ナレッジというのは基盤の話が先行する場合が多いが、格納したから使ってください、次の日から運用がバラ色ですよという話がよく聞かれます。しかし、実はそうではありません。ナレッジ型運用、ナレッジがそこに存在していることを前提とした運用に強制的に変えて行くことが非常に重要です」と北岡氏は指摘する。

ナレッジ型運用というのは、辞書持ち込み型試験のようなものだ。スキルの低いオペレーターを育てて行くというのが従来のコンタクトセンターの考え方だが、ナレッジ型運用ではナレッジでサポートすることでスキルの低いオペレーターでも一人前の対応をさせることができないかというのが、骨格にある考え方だという。ベテランでも必ず検索・確認を行う、研修時間を減らして基盤を利用した学習を増やすなどして全員が均一な応対をできるようにしていくといった例が挙げられた。

ナレッジの存在を前提としたナレッジ型運用への変化

ナレッジ型運用の特徴

さらに、運用の中で必要となるナレッジ基盤の整備を担当するのがナレッジチームだ。状況の変化によるナレッジの追加や変化、運用状況を受けた修正や削除といった部分を担当し、ナレッジのPDCAをまわしてコンテンツを高度化させて行くためのチームとなる。設計ばかりに注力するのでなく、運用の中でコンテンツを高めることが必要だと北岡氏は指摘。そしてナレッジの活用がきちんとできているのかどうかを具体的な数値による検証を行い、PDCAを行うことも重要だと語り、これらが揃うことでAI導入の準備が完了したといえると語られた。

コンテンツを整備するナレッジチーム

具体的な評価を行うためのナレッジKPI

ナレッジ活用が十分にできている状態になると、AIを導入した時に活用しやすくなる。講演ではAIを導入することで評価の高いオペレーターの対応をAIが学習して正答率を高めてWeb-Selfに転用する例や、低レベルオペレーターの成長を支援する例などをも紹介された。

ナレッジ活用からAI活用へ

成熟レベルを統合レベルまで押し上げることがAI活用には必須

「ナレッジ活用の成熟レベルを数値化してみると、80%くらいの企業が50点程度の位置にある。AIを目指すためには統合レベル、少なくとも75点くらいまでには持って行く必要がある。そこまで行けば次があると我々は感覚的に思っている。通常運用をナレッジ型運用に変え、日々ブラッシュアップして成長して行くような仕掛けができているところへAIを入れると、高度化できる。逆にいえば一気に加速するためにいきなりAIを入れてもなかなか難しい」と北岡氏はコンサルティング業務の中で見えてきたポイントを語った。