imecが回路パターン倒壊の研究に注力
SamsungのLee氏が基調講演で指摘した微細構造のパターン倒壊は、今回の会議の大きなテーマの1つで、ベルギーimec(および博士課程の学生がimecで研究している大学)から3件、STMicroelectronics/仏Leti(国立電子技術情報研究所)から1件発表され、微細化で世界の先頭を走るimecが、このテーマに集中的に取り組んでいる姿が浮き彫りになった。パターン倒壊には、表面濡れ性や表面接着性やダイナミックな物理力のバランスや構造体の物性などが複雑にからんでおり、パターン倒壊メカニズムに関して今後の研究の進展とともに倒壊防止法の開発が期待される。ウォーターマーク制御に関しては、スクリーンドイツ法人/GLOBALFOUNDRIESから報告された。
FEOL研究はシリコンから非シリコン材料へシフト
今後、シリコンよりもキャリア移動度の高いGeやIII-V族半導体材料が使われるようになることを見越して、FEOL分野では、非シリコン材料表面の洗浄、エッチングやパッシベーションに関する発表が中心となった。
Ge基板関連では、
- Geナノワイヤ形成のためのSiGeの選択ウェット・エッチング(imec/スクリーン/米Entegris)
- 酸性溶液中でのGeの5nmノードに向けた原子層レベルの処理(imec/ベルギー・ルーベンカトリック大学)
- Ge表面の硫黄によるパッシベーションの分子モデル (オーストリア・グラーツ工科大学)
- ウェット・ケミカル処理後のGe表面リンスの影響(スクリーン/imec)
- SiGeエピタキシャル成長における純水中の過酸化水素の影響(栗田工業/imec/スクリーン)
III-V族基板に関しては、
- 過酸化水素およびヒドラジンガスによるSiGeおよびInGaAsの表面パッシベーション (米RASIRC/カリフォルニア州立大学サンディエゴ校)
- GaAsのデジタルエッチング (フランス・グルノーブルアルプス大学/Leti)
- 1-エイコサンチオールによるGaAs、InGaAs、InSbパッシベーション (米アリゾナ大学)
などの発表が行われた。今後、MOSトランジスタに高移動度チャネル材料が採用されるにつれて、さらにこの分野の発表が増加するだろう。
BEOL工程のCu/low-k洗浄が最大のセッション
今回のシンポジウムで最大のセッションは、BEOL(多層配線工程)洗浄を取り上げたセッションで、13件の報告があった。多孔質low-k膜にダメージを与えない洗浄や生じたダメージの回復のための処理、ドライエッチングにより生じた残渣の除去、Cu配線洗浄液およびリンス水中の溶存酸素制御によるCu消失防止などの発表が注目を浴びた。
半導体基板以外にもさまざまな洗浄
半導体基板以外の洗浄としては、
- EUVリソグラフィのマスクのウェット洗浄 (imec/米独SUSS Tech)
- フォトマスクのへーズ除去 (中国SMIC)
- バイオ電子デバイス用ポリマー基板上へのエキシマ光照射による表面準備 (ウシオ欧州法人)
- FOUP(300mmウェハ収納密閉箱)洗浄機とソーター、ストッカー、パーティクルカウンターの一体化 (韓国SK Hynix/韓瑞大学校)
などが発表された。SK Hynixは前回のUCPSSで、ドライエッチング後の残留フッ素ガスでFOUP内壁が汚染され、深刻な歩留まり低下を招くので、FOUOP洗浄の重要性を強調していた。FOUPは、微粒子汚染や有機汚染など外部からの汚染を防止するには便利なツールだが、汚染源が内部にある場合は厄介である。今回の同社の発表は、インラインFOUP洗浄複合機を導入することにより300mm DRAM量産ラインの装置占有面積減小と作業効率向上(工程数、配置人員、搬送距離、処理時間などの削減)が図れたことを報告していた。
冒頭の基調講演は論文集(図3)に収録されていないので、詳しく紹介したが、それ以外のすべての発表は、フルペーパー(論文)として、「Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces XIII」(Solid State Phenomena Vol. 255)として出版されており、インターネット上からもアクセス可能である。
なお、次回のUCPSSは2年後の2018年9月に再びベルギーで開催される予定である。また、直近の洗浄国際会議はECS主催の「15th International Symposium on Semiconductor Cleaning Science & Technology(SCST2017)」で、 2017年10月に米国の首都であるワシントンD.C郊外のNational Harborにて開催される。