さらに、データ活用も始まっている。例えば、ユーザーはダウンロード時にプロフィールと自分の利用する店舗の登録を行うが、意外なデータも見えてきたという。

「創業時は若者が多い店だったのですが、長年愛用していただいている分、お客さまの年齢層が上がってきています。アプリなら若い層にアピールできるのではないかと考えましたが、想定通り、アプリを利用して来店くださるのは、20~30代の方が多いです。意外だったのは、一部のエリアで20代女性が多かったことですね」と海津氏。ランチメインの利用者などのほかに、住宅地に近いエリアで主婦層が利用している様子なども見えてきたという。

現在のところ、ダウンロードしたユーザーの4分の1程度がアプリのクーポンを利用しているという。そして、利用するユーザーは繰り返し使う傾向が高く、リピーターへの浸透度は高まってきているようだ。

地力アピールとダウンロード促進で新規顧客増加を狙う

今後の課題は、新規顧客の獲得になるだろう。アプリはあくまでもダウンロードしたユーザーに対するアピールがメインになるため、さくら水産を普段利用していない人にリーチするための施策も必要だという。

「新規顧客の獲得はなかなか難しいと考えています。例えば、ビーコンを利用してプッシュで情報配信を行うという方法もありますが、特に気に入っているわけでもない店からいきなりプッシュ通知が来ても気持ちが悪いですよね。アプリもダウンロード数が増えればやれることは広がると思いますが、それとは別の方法もGMO TECHと一緒に考えていきたいと思っています」と中西氏は語る。

現在考えているのは、Web検索からアプリへの誘導だ。多くの人が、店を探す時にスマートフォンで検索をする時代だけに、検索で興味を持ってもらった上で店舗やアプリに対する誘導を行うという流れが有効になると考えられる。

「例えば、今は社内SNS向けにだけ流している情報なのですが、築地に近い東銀座店では新鮮な魚を買い付けて台車で直接運んだりしている様子を紹介しています。こうした新鮮な魚を楽しめる店ということなどを積極的に発信していきたいですね」と海津氏。

9月5日からは、「海産物居酒屋」としての実力をアピールするキャンペーンとして、さかなクンを応援団長に迎えた「新鮮力プロジェクト」が発足。全国の漁港や産地から目利きのバイヤーが仕入れた食材を、新鮮なまま安価でおいしく提供していることを強調する取り組みだ。こうした地力のアピールから興味を持ってもらい、アプリ取得や来店を促し、さらにアプリで再訪を促すという形が理想と言えるだろう。

「新鮮力プロジェクト」の公式ページ

「今のところ、自社サイトや席に置いてあるPOPのQRコード、注文用タブレットのアイドル時のスライド表示などでアプリを紹介していますが、これからいかにダウンロードを増やしていくかが課題です。ダウンロード数が増えればやれることはもっと増えて行くと思います」と、中西氏は今後の抱負を語った。