意外に役立った「Adobe XD」の機能とは?
そうした中、荒木氏がプロトタイプの作成に最速なツールとして採用したのが、アドビのUI/UXデザイナー向けツール「Adobe Experience Design(以下、Adobe XD)」だという。
メリットとしては、デザイナーが手慣れたアドビツールの操作感で、Webデザインで多用されるリスト表示を容易に作成できる「リピートグリッド」などの機能を使えること、画面遷移・共有の容易さが挙げられたほか、意外に役立ったというのがモックの動画撮影機能。これにより「(クライアントへの)使い方の説明を省くことができる」と荒木氏。
プロトタイプの作成には、他にもイメージの共有速度を上げるために、ふだん見慣れているUIで作ることや、いち早く実用段階に着手できるかが大切なため、実装ベースで作ることなどが挙げられた。
また、荒木氏が考えるUI/UXデザイナーに必要なのは、初期の段階でコアを見抜いて抽出し、選択して優れた仮説を立て、それを可能性に変える"クリエイティブジャンプ"だと語る。
「これには日々のインプット力や相手からのヒアリング力、市場とユーザーの各種調査、それをまとめてきた数から来る勘により、最初の一手でいかに遠くまで飛べるかというジャンプもあるが、とにかくその場で早く高く飛ぶというスピードで実現するものもある。つまり、まだできないと誰もが思っているタイミングで先手を打ち、やったこと自体が評価されて、驚きや安心につながる。こちらのほうが、現在のプロトタイプの主戦場となっている」と荒木氏は説く。
UI/UXデザイナーに不可欠な「3つの能力」
そうした上で、デザイナーに必要な能力は3つ。まずは"ビジネスパートナー・デザイナーのバランス感覚"だ。
「仕事を依頼してきたクライアントにとって制作屋ではなく、専門家としてのパートナーになること。クライアント自身が考え、作っていくための優秀な相棒になることが大事。この能力を鍛えるためには、新聞や業界誌を読んだり、クライアントの記事を探すこと。そしてそのビジネスのユーザーになったり、ファンとして応援してみたり。プロジェクトの上流から参加するというのも重要」(荒木氏)
2つ目に求められるのが"説明する・対話する"能力だ。「プロトタイプを作るだけでなく、説明できなければ意味をなさない。クライアントと対話ができなければ発見が生まれない。速さとクオリティは1人では絶対に出せないので、社内チームでのコミュニケーションもデザイナーが先導を切ること。しゃべるのが仕事の8割ぐらいの気持ちでやる。この能力を鍛えるには、まずはデザインを文章で説明してみて、次にそれを人に話せるようにすること」と荒木氏。
そして最後の3つ目が"がむしゃら"。「わからなくてもとにかくやってみることがある。やってみればわかることもあるし、意外とできるもの。Adobe XDもとりあえずやり続けている」と語り、セッションを結んだ。