――メディア芸術祭で行ったhandiiiの展示では、カラーや柄の異なるものが複数展示されていました。HACKberryではプロジェクトの性質上、exiiiの側からデザイン提案を行うというよりは、各地のユーザーの自主性を重んじるというところでしょうか?
ええ、そうですね。
――exiiiの手がける義手は、ロボティクス性を押し出したというか、メカらしいデザインが印象的です。各地でオープンソースのデータを元に作られている義手もデザインの方向性は変わらず、というところでしょうか?
はい。ただ、腕にとりつけるソケットの部分は、森川さんのものを3Dスキャンで作っていると告知して以降、アレンジしてご自分に合う物を作っていらっしゃるケースが多いです。センサーを変更したドイツの方もそうでしたね。
ああ、でも、……ひとりいらっしゃいましたね。ガワのデザインを、原型がなくなるまで変えていた方が(笑)そこは自由にやってもらえたらなと思っています。
また、手の先の部分すらもないものもありましたね。それを作ったのはドッグブリーダーの方で、力を入れると指先というか手の先から、犬のエサが出るようになっていました。なるほど、それも面白いじゃないかと(笑)
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事例紹介 |
――ユーザーの主体的な開発が進んでいる、というところですね。ところで、HACKberryはオープンソースプロジェクトなので、exiiiの収益への影響はないということでしょうか?
このプロジェクトに関して、僕らは権利を押さえてビジネスをするという目的はなく、むしろ権利関係があったらオープンなイノベーションの妨げになってしまうのではという懸念もあるので、あまりそこはうるさく取り決めていません。
そうは言っても、「モノを作る人同士のリスペクト」というものが強くあると感じます。例えば、中国や中東などから、これを量産して売りたいんだというお声がけが複数あって、それらについて承諾のお返事をすでにしています。その返事のあと、先方から「売り上げの何%かを(exiiiに)払いたいんだ」というご連絡をいただきました。
――敬意を表して、先方から進んで利益分配のご相談があったんですね。
はい。こうした量産化、ビジネス活用の要望があったことを受けて、オープンソースの利用規約のなかに反映しました。「もしもデータを営利目的で使用する場合、収益の一部をexiiiに還元して頂くことで、プロジェクト全体を持続可能にできる形にしていただく」項目を加えました。
――昨今のムーブメントを受けてプロダクトの量産化に邁進しているスタートアップが多い中で、これだけ世界各国からユーザーのフィードバックを受け、自社でもプロダクトをブラッシュアップをする中で、自社生産をされていないのは新鮮に映ります。exiii発のプロダクトとしての商品化は考えていないのでしょうか?
先ほどお話しした海外メーカーからの声かけが実現すれば、量産されることもあるかと思います。ですが、exiiiとしては他にも取り組んでいることがありますし、このプロジェクトに関しては世界中に広がってくれれば、それが一番いいと考えています。
――2020年に東京でパラリンピックが開催されるにあたり、義肢が注目される機会も増えるかと思います。他企業・団体などとの協業事例はありますか?
僕が関わっているもので言えば、デザイン面で協力しているプロジェクトがいくつかあります。ソニーCSLの遠藤謙さんの義足や、国立リハビリテーションセンターで河島先生が手がけている下肢装具(歩行補助具)のデザインなどをやらせていただいています。
――HACKberryのプロジェクトに「終わり」というものはないのだとは感じるのですが、何かロードマップはありますか?
今後は、ある意味子供が成長して巣立っていくのを見守るように、動向をみていこうかなと。先ほどもお話しましたが、あとはユーザーが改善してもらったものをどんどん発表していただいて、フォーラムの上で活発に交流を広げてもらうことで、僕らが関わらなくても自動的にアップデートされるようなものになっていったらいいなと思います。
メディア芸術祭20周年展 変える力
会期 2016年10月15日~11月6日
メイン会場 アーツ千代田 3331
サテライト会場 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、UDX THEATER、国立新美術館 他
開場時間 11:00~19:00(※入場は閉場の30分前まで)
入場無料 ※一部のイベントは有料