また、発想やビジネスモデルといったものでは、GEデジタル シニア・ソフトウェアマネージャーのデビッド・ビンガム氏が「GEはUXにこだわりを持っており、アウトカム(成果)を軸にしたアプローチになぜデザイナーが関わる必要があるのか」、というデザイン思考的な考え方を披露している。
同氏は「GEが工業企業からデジタル企業へと転身を図るうえで、従来より製造業を生業としてきた企業に加え、IBMやMicrosoft、Amazomといった企業も競合になる可能性がでてきた。そうしたときに生じる、新たな複雑性について考える必要がある」とし、良いデザインとされる特徴をアウトカムとして見ると、良いデザインに至るために、そのプロセスは何か、を考える必要があるとする。「例えば製品を売る、ということにアウトカムがなれば、あるべきプロセスは協力的、反復的、ということが考えられる」。
また、最近の流れとしては、顧客に対する関与の仕方も変化してきたという。「我々のエンゲージプロセスは、リサーチ→デザイン→開発→展開→リサーチ…という円環をなしている。ここに新たな顧客がやってきた場合、リサーチに至る前までに、イントロ(紹介)→ワークアウト→提案という段階を経ることとなる。ただし、展開から、新規の顧客にその内容だけを渡した場合、本来必要となる学習の機会が失われることとなる。そのため、我々としては、そのまま展開されたものを渡すのではなく、顧客から逆に学ぶことで、得られた情報と、展開した内容、分析結果、アプリ、サービスなどをすり合わせ、抱えている問題に意味のある形で関係づける結果、展開から提案へとアプローチすることとなる」と、現在のプロセスの流れを説明し、その上で、「1つ重要なことは考えず過ぎないこと。細かいことはプロセスを経ることで分かってくる」とした。
さらに、「注意すべきなのは、実際のワークアウトを決める際、公式や数式といったものは存在しないということであり、そうした点を考慮しつつ、顧客の問題対応についてどうすればよいかの全体像を考える」という段階を踏んだ後、リサーチを開始、そこからプロセスのループが始まることとなる。こうして開発されるツールは、最初のプロセスに関わってくれた人たちに向けたものであり、彼らからうまく使えているのか、などを確認し、さらに開発を行っていく、という流れとなる。
アウトカムの考え方は、複雑なシステムになればなるほど、有効性を発揮する。「最終的なアウトカムから逆戻りして、そこに至るためには、どのようなステップを踏んでいけばよいかを考えればよい」と同氏は説明するほか、「エンジニアは複雑性の主人であり、デザイナーは簡素さの主人であるという格言もある。複雑なものごとを明確化する上で、そうしたデザイナーの存在は、問題解決の一助となるだろう」と、そうした人が介在するシステムにおいて、デザイナー的視点が必要になってくることを強調した。