業績悪化が続くMicronへの買収は起こるのか?
DRAMの長引く価格低下で、Micronの業績は悪化の一途をたどっている。同社の会計年度第3四半期にあたる2016年3-5月期は前期に続いて営業損失が生じたため、2400名のレイオフが予定されている。
2014年9-11月期に46億ドル近くあった売上高も、直近の3-5月期は29億ドルを切ってしまっている。そのため、DRAM業界内で生き残りをかけたパートナー探しを続けている。2015年に、中国の半導体・ハイテク複合企業、紫光集団(清華大学傘下の国有企業)が同社を230億ドルで買収しようとしたが、米国政府(対米外国投資委員会:CFIUS)に阻止された。中国勢は、これに懲りずに今度はMicronの非DRAM製品部門を買収しようと企てていると一部では報道されている。
その一方で、ある米国企業がMicronとM&A(合併・買収)の話し合いをしているとの噂もあり、時価総額が激減して、他社が買収しやすくなっているMicronの先行きは不透明だ。
業績悪化でもMicronは台湾メーカーを買収するのか?
Micronは、1998年にDRAMビジネスから撤退を決めたTexas Instrumentsの7つの半導体前処理工程工場を買収して以降、2008年には、倒産したドイツのDRAMメーカーQimondaが所有していた台湾Inotera Memories(華亜科技)の株を買収し、同社を33%所有した。2012年には倒産したエルピーダメモリを買収するなど、DRAMの勢力を拡大してきた。現在でも同社は、このやり方を今後も推し進めてDRAMシェア拡大を図りたい意向を有しているようだ。Wu氏によれば、Micronにとって、台湾はもっとも活発なDRAM生産の場であり、同社のDRAM生産能力の6割は同社の台湾法人Micron Memory Taiwan(以前はRexchipと呼ばれていたDRAMメーカー)が叩きだしている。
Micron Memory Taiwanにとって地元の協力会社(ファウンドリ)であるInoteraは, 2016年後半に20nmへ移行予定である。Inoteraの主要製品はモバイルDRAMであり、PCやサーバ向けよりも利益が大きい。
Micronは、Inoteraの全株式の33%を所有しているが、残りの67%も買収し、完全子会社化しようとしている。すでに、昨年の内に両社はこの件で合意しているが、その実行は遅れ気味で未だに実施されていない。これについても、Micronの身売り話とからめて、さまざまな憶測が業界に飛び交っている。
SamsungはDRAMへの設備投資を減らしNANDへ注力
著者がSamsung関係者から得た情報では、Samsungは6月14日の投資家説明会で、今後DRAMへの設備投資を減じて、3D NAND型フラッシュメモリへの投資に振り向けると説明したという。
2016年から2017年にかけて総額25兆ウォン(2兆円超)を韓国京畿道華城(ファソン)および平澤(ピョンテク)の新設3D NANDファブに集中投資し、NANDのライバル(東芝/SanDisk、 Micron/Intel、SK Hynix)を振り切りを図るほか、中国本土で数兆円規模の投資を行いNAND型フラッシュメモリに参入しようとしている中国勢に対抗する作戦に出たと韓国メディアは伝えている。
かつてSamsungは、DRAMで日本勢を振り切って世界トップ企業に躍り出た"爆"投資作戦をフラッシュメモリでもとるようだ。
Samsungの権五鉉副会長と尹富根、申宗均の両社長は7月4日、「今年はSamsungにとって成長とアイデンティティの分水嶺になる大変重要な年だ」とのメッセージを社員に向けて発し、トップとして勝負をかける意気込みを示すと共に社員の奮起を促したという。