AWSプログラムを活用して知識・スキルをアップ

オンプレミスによるシステム構築と比較して、AWSを活用したシステム構築は調達の時間とコストが大幅に抑えられるようになった。また、構築作業もAMI(Amazon マシンイメージ)を活用することで工数を削減でき、大幅なスピードアップを実現している。大きな成功をおさめた千趣会のクラウド移行だが、利用する上での悩みもあるという。

「自分たちで検討・構築を進めてきた結果、管理・運用面での課題も見えてきました。このまま利用を拡大しても問題にならないのかという不安もあり、さらなる活用方法などを知るため、AWSトレーニングのアソシエイトレベルの3講座を受講しました」と池本氏。

具体的には「Architecting on AWS」、「Developing on AWS」、「System Operation on AWS」の3つを受講。結果として、社内に知識を持つメンバーも増え、ムリなくクラウドファーストのシステム構築が行えるようになったという。

現在の千趣会では、USBデバイスを使う必要があるなどハードウェア上のな制約があるシステムや、どうしても止められない仕組み、レガシーな接続を求められるシステムはオンプレミスで残しているものの、大半のシステムはクラウド上で稼働させられるようになっている。

AWSの活用が進みシステム環境も変化した

クラウドにも障害やメンテナンスがある

AWSを十分に活用できるようになった中、システム構築のスピード化や設計の効率化、スモールスタートからのスケールアップが容易であるといった良い成果を得る一方で、クラウドにも障害やメンテナンスがあるということを池本氏は指摘している。

障害に対しては、原因追及よりもサービス復旧を優先させるのがクラウド活用ならではのポリシーであるとし、メンテナンスに対してはオンプレミス時のような個別調整ができないことを踏まえてあらかじめ冗長構成をとるなどの対策が必要だとも語った。

また、クラウドサービスを利用すれば安価なシステムが構築できるというイメージもあるが、クラウドサービスの利用範囲が広がると障害・メンテナンスに備えた冗長構成の採用など、信頼性確保のためにある程度のコストがかかってくる。この点についても、RTOやRPOについて社内で議論し、適切なコストのかけかたを決める必要があると指摘した。

今後、千趣会ではさらに自社メンバーのレベルアップを図っていく。AWS認定ソリューションアーキテクトのアソシエイト試験やプロフェッショナル試験へのチャレンジ、Advanced Architecting on AWS研修の受講などを予定。さらに、社内での活用幅を広げて、標準化した環境の自動展開を検討・計画しているという。

「AWSを一定期間利用した結果、クラウドベンダーとの関係性がかなり重要だと感じています。障害が発生した場合、どこまでベンダーを巻き込めるのか、ユーザーが希望する情報提供が行われるのか、ベンダー担当者が身近な存在であるのかといったことが重要です。また、AWSの積極的活用によって、検証環境の調査津が容易になって対応が効率化したほか、使った分だけ課金されるということが浸透してインフラコストが再認識されるなど、IT部門内にも変化がありました」と、池本氏はユーザーとしての率直な感想を教えてくれた、

そして、これからAWSの導入を検討しようとしている企業に向けて「AWSはスモールスタートが可能なのでとにかく使ってみること、トライアルの中でサポートのレベルを確認しておくこと、有償サポートはなるべく契約し活用すること、障害は起きるものと考えてRTO/RPOの議論をあらかじめしておくこと、AWSの担当者と仲よくすることの5つが大切」と、池本氏はアドバイスを行って講演を結んだ。