開業コストの中でもっとも大きな割合を占めているのが内装費だというほど、内部はかなりオシャレだ。カフェだと手狭で働きづらいという人に利用してもらえるような、働きやすくオシャレな場を目指しているのだという。
「NewWork」の料金プランとしては、オープンスペースのフリーアドレス席(シェアデスク席)を利用するものが2種類ある。1つはユーザー1人ごとの契約で月額3万円で営業時間内はどの店舗でも使い放題というもの。もう1つは月額5000円で8時間まで自由に利用できるが、その先は時間あたり500円の従量課金になるプランで、こちらは1契約で複数人が交代して利用することもできる。ほかに、専用利用契約のブース席もある。
「一般的なシェアオフィスの価格から大きくはずれないように金額を設定しました。二次審査の時には地方での成功事例が少ないことや、どの店舗でも自由に使えるというしくみで実際にはどれくらい使われるのかなど、かなりつっこまれました」と野﨑氏。
オープンにあたっては利用率の予測などを行い、最終的につくられたプランはかなり手頃な価格となった。これを実現している1つの要因が、サイボウズのkintoneを利用した無人運営だろう。実際の店舗には受付カウンターのようなものは存在せず、入口に非接触ICカードをかざしてドアを開けるリーダーが取り付けられている。ユーザーが事前に配布されたカードを利用して入退室し、その履歴がkintoneで管理され、在室時間を把握するしくみだ。
利用料金も履歴をベースに自動的に計上される。請求書は法人対象であるため紙ベースでの発行が基本となり手作業になるが、ユーザーの入退管理や利用時間管理は自動化されている。そしてこのシステムは、料金算定だけでなく企業側の勤怠管理にも利用できる。在宅ワーク等では把握しづらい実際の勤務時間を、地元に出勤させるという形で管理可能にするのだ。
店舗内にはフリーアドレス席以外にも、ボックス型のブース席も存在しており、こちらは専有利用。その場合は、デスクトップPCを設置する、荷物を置くといった利用も可能だ。また室内にはロッカーと、時間貸しの会議室も存在。通話時に利用する電話ブースと、ドキュメント出力が可能な複合機も備えられている。
「付属の会議室は別料金になりますが、こちらにはゲートを作っていません。また、打ち合わせ利用の時には会員1人が打ち合わせ相手を入室させることを認めていますが、基本的なオフィス利用は共連れ禁止です。法人単位で事前契約したユーザーしか受け入れないことで秩序は保たれると考えられている。
万が一、利用者が不審行動をとった場合には壁のボタンを押せばグループ会社である東急セキュリティから警備員がかけつけることになっている。複合機はあえて大型の、クラウド対応した高機能機種を設置することでメンテナンスをオフィス機器事業者に委託。野﨑氏をはじめとする事業部のスタッフは店舗にかけつけることなく事業がまわるように作られている。
既存店と提携し地方展開
取材を行った6月現在は、サービスとしてスタートしているものの実際の利用者は東京急行電鉄の社員や、野﨑氏が以前から親しくしている一部の企業などに限られており、いわば試験運用的な段階だった。本格的なスタートは7月を予定しており、3年後に黒字化を目指すという。
「無人運営というのはコスト面から決まっていましたが、システムについてはフルスクラッチも含めていくつかの案を検討しました。その中で、2月に動き出した事業を5月にはスタートさせたいというスケジュール感に対応できるものがサイボウズのkintoneだけだったのです」と語る野﨑氏は、「このシステムのおかげで地方への展開もスムーズに行えました」とも語る。
現在「NewWork」の直営店舗は都内を中心に展開しているが、すでに会員が利用できるシェアオフィスは千葉県、大阪府などにも存在する。今後は埼玉県などにも増える予定だ。これは、他社との提携により実現したものだ。
提携先にはノートPCとICカードリーダーのみを設置してもらい、利用者は受付で「NewWork」のカードを読み取らせることで直営店と同じように利用できる。カードの情報はクラウド上のkintoneで管理され、直営店でも提携店舗でも関係なく総合的な利用ログを管理できるしくみだ。
「最初はもっと大きな機器を設置するつもりでしたが、シェアオフィスは手狭なところが多く難しいという印象がありました。困っていた時、ノートPC1台で十分対応可能だとkintoneによるシステム構築を進めたアールスリーインスティテュートから提案され、これによって展開がスムーズになったのです」と野﨑氏。
現在は法人のみの利用に限定しているが、今後は個人への開放も検討していくという。
「現在個人のお客様からも多くのお問い合わせをいただいております。こちらにもいずれ対応したいと考えています。ただ、無人運営ですのでマナーを守って利用していただける方でないと困ります。契約時には実際にお会いして店舗の様子を見ていただくなど、工夫したいですね」と野﨑氏。
走り出したばかりの「NewWork」が、身近なオフィスとして多くの人に利用される場となることに期待したい。